研究実績の概要 |
本年度は少子高齢社会からの大きな要請を踏まえ、「芸術家の労働市場」という大テーマを、1)芸術と医療の融合による需要創出の具体的調査、2)現代美術以降の芸術としてのアール・ブリュットの研究、3)芸術家の雇用と搾取の経済学的分析を集中的に調査・検討した。 1)芸術と医療の融合による需要創出は、歴史的には未開の新たな分野であり、アーティスト・ドクターの事例は数件しか確認できないが、アール・ブリュット研究の高まりとともに芸術の有用性が発揮される隣接領域としての意義を確認した。現代美術の後にきたるべきものは多摩美術大学教授の椹木野衣が「後美術論」研究と仮定したが、同「アウトサイダー・アート入門」の出版によって1)「芸術と医療」の融合と2)アール・ブリュットの流行が同根であることが証明された.そのことによって眠っている私たちの創造性を21世紀の社会において狭義の美術を超えた、より社会化された創造性となることが証明され、私たち誰もがもつ創造性の発揮を促進する厚生芸術の意義も確認した。 3)芸術家の雇用と搾取の経済学的分析は「アーティストのサバイバル第一回実態調査2014」で明らかにした。【調査概要調査概要】:調査対象;日本在住アーティスト、一部海外在住/調査時期;2014.5,22-6.30/回収サンプル数;727/調査方法;インターネットによる調査の配布と回収。この調査結果より厚生芸術の初動舞台である芸術系大学のでの教育内容と学生が求める教育内容のギャップを数量データで明らかにした。二世紀前の芸術アカデミーの残滓のような教育を行い若い豊かな創造性を無為に硬冷化(高齢化でもある)している現在の芸術教育の原因をも明らかにし、また社会に益する芸術とアーティストを生み出す具体的提言を獲得した。。以上より、厚生芸術の基礎研究はすべての人々の厚生を向上させる創造的資本論と同義であることが確認された。
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