本研究は、日本の説話文学や唱導文芸における仏教経典に由来する説話の受容と展開の様相を具体的にあきらかにすることを目的として、両者の媒介としての仏教類書を対象とした文献学的調査を進めるものである。『今昔物語集』に影響を与えた中国の仏教類書『金蔵論』については、敦煌写本や高麗時代の版本などの新出資料にかんして、テキストの基礎的な分析・考察を終えたことが成果として挙げられる。さらに、譬喩因縁譚だけでなく、仏伝故事にも研究対象を広げた結果、仏教経典から仏教類書や経典の注釈書等を経て『釈迦の本地』などの仏伝文学が形成される過程を跡づけることができた。
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