研究課題/領域番号 |
24520208
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
湯浅 佳子 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (00282781)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 近世文学 / 近世軍書 / 仮名草子 / 室町軍記 |
研究概要 |
近世初期・前期の近世軍書における生成・展開と流布についての基礎的研究として、初年度である平成24年度においては、「研究計画・方法」に従い、1,作品の流布に関する調査、2,作品の内容に関する考察について、以下のような調査分析を行った。 1,作品の流布に関する調査 (1)『戦国軍記事典 群雄割拠篇』『戦国軍記事典 天下統一篇』『室町軍記総覧』等をてがかりに、室町・戦国期に成立した軍記300作品をリストアップし、書名・成立刊行年・著編者・諸本・概要の一覧を作成した。(2)関東の戦乱を記した軍書であり、江戸期の文芸作品にも大きな影響を及ぼした『北条記』とその関連軍記・軍書(『後北条記』『中古日本治乱記』『関東合戦記』等)について、平成24年度以前より進めてきた諸本調査・書誌調査を継続して行い、データベース化した。『北条記』には異本や関連軍書が多数あり、書誌調査により諸本の系統付けを行った。また、内閣文庫本には多くの軍記・軍書類が所蔵されており、それらの諸本の撮影を行い、画像資料としてデータ化した。 2,作品の内容に関する調査 (1)『北条記』とその関連軍記・軍書について、梗概をまとめ、データとして入力した。『北条記』は諸本によって本文に異同があるため、六巻本『北条記』を中心に、五巻本・十巻本・九巻本の本文異同が分かるように概要をデータとして入力した。(2)室町・戦国軍記における関東の戦乱を記した『鎌倉管領九代記』が、『北条記』や『甲陽軍鑑』等の軍記に拠りながら歴史を記していることについて考察し、『近世文藝』98号(日本近世文学会)に論文としてまとめた(平成25年7月刊行予定)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に掲載した「研究の目的」の達成度については、以下のとおりである。 (1)「作品の流布に関する調査」について、『戦国軍記事典』等に記載される軍記・軍書については、書名・著編者・成立刊行年・巻冊等の書誌的な事項をリスト化し、入力した。また『北条記』関連軍記・軍書の諸本調査については、『戦国軍記事典』等に掲載される諸本についての書誌調査を行い、より具体的な事柄をデータ化した。 (2)「作品の内容に関する調査」について、『北条記』の異本調査を行い、六巻本『北条記』の概要をデータとして入力し、さらに異本・類書についても、六巻本『北条記』と相違する内容をデータ化し、異本相互の内容の比較ができるようにした。 (1)(2)の総まとめとして、室町軍記から近世軍書・仮名草子への展開という視点から、論文「『鎌倉管領九代記』の歴史叙述の方法」をまとめ、『北条記』の後世への影響について考察した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、今年度に引き続き、近世軍書について、①書誌調査と②内容分析を行う。 ①諸本調査については、まず、『北条記』『鎌倉管領九代記』の周辺書(『後太平記』『関東合戦記』『中古日本治乱記』『甲陽軍鑑』『北条五代記』等)に重点を置きながら、各図書館・文庫の諸本の書誌調査とデータ化を継続して行う。『北条記』関連の書には多くの写本があるため、それぞれの本が有する書誌的な性格を調査し、相互の影響関係を明らかにし、系統付けを行う。 また、近世軍書と仮名草子との関係ということに留意しつつ、『浅井物語』『古老軍物語』等の絵入り平仮名の仮名草子に焦点を当て、それらと影響関係にあると思われる軍記・軍書類(『江源武鑑』『浅井軍記』『石田軍記』『浅井三代記』『蒲生軍記』等)についての諸本調査も新たに行う。 ②内容調査については、①にあげた作品類について、内容の面から影響関係について考察を行う。特に、写本から板本へ、板本から写本への影響について留意しながら内容調査を行う。また、近世軍記と仮名草子との相互関係についても考察を行う。具体的には、①にあげた『浅井物語』や『古老軍物語』等の平仮名営利仮名草子の成立背景について、近世軍書類との関係を考える。また、『伽婢子』『東海道名所記』などの、軍書とは直接には関係のない平仮名絵入りの仮名草子が、前代・当代の軍記・軍書からどれほどの影響を受けているのかについても考察を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
1,物品費 ① 図書(近世軍記・軍書、仮名草子、歴史・思想に関する資料や論文書)30万円。② 文献複写(上記のジャンルに関する写本・板本の複写)20万円。 2,旅費 ①愛媛県大洲市図書館(1名、2泊、6万円)。②青森県弘前市立図書館(1名、2泊、6万円)。③大分県臼杵市立図書館(1名、2泊、7万円)。④山口県山口大学図書館(1名、2泊、5万円)。⑤福岡県九州大学図書館(1名、2泊、6万円)。
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