研究課題/領域番号 |
24520208
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
湯浅 佳子 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (00282781)
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キーワード | 近世文学 / 近世軍書 / 講談 / 仮名草子 / 戦国軍記 / 歴史読み物 |
研究概要 |
「近世初期・前期の近世軍書における生成・展開と流布についての基礎的研究」について、2年目である本年度は、去年に引き続き、1,作品の流布に関する調査、2作品の内容に関する考察について、以下のような調査分析を行った。 1,作品の流布に関する調査については、書誌調査を行い、昨年度作成した近世軍書作品のデータベースを増補させた。データとして加えたのは、主に関東地方に関する軍書類である。書誌調査については、『鎌倉管領九代記』と内容上の影響関係があり、特に多くの異本が存する『北条記』関連書や、関東甲信地方の軍書を集中して行った。具体的には『北条記』『北条五代記』『北条五代実記』『相州兵乱記』『甲陽軍鑑』『鎌倉北条九代記』『鎌倉管領九代記』『鎌倉物語』『東乱記』『豆相記』『関侍伝記』『後太平記』等である。調査したのは、内閣文庫・国会図書館・岡山大学附属図書館・広島市中央図書館、豊橋中央図書館・筑波大学附属図書館・玉川大学図書館・静嘉堂文庫・国文学研究資料館等の所蔵本である。そこで書誌調査とともに、デジタルカメラによる撮影を行った。 2,作品の内容に関する調査については、1で調査したことをもとに、内容調査を行い、系統付けを行った。平成22年に『東京学芸大学紀要』63集に、「『北条記』(『東乱記』『小田原記』について」という論文をまとめ、『北条記』関連書の分類を行った。そのことをふまえ、さらに諸本の前後関係を考察するために、諸本の内容比較調査を行った。特に『北条盛衰記』(江西逸志子著、寛文一三板)を中心とした諸本の生成過程を考察し、1月の仮名草子研究会で口頭発表を行った。これについてはなお現在も考察中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
25年度は、1,作品の流布に関する調査については、『鎌倉管領九代記』とその関連軍記・軍書類についての書誌調査を行うことが課題であった。それらについての書誌調査については、首都圏を中心に概ね調査を終え、データベース化も行った。 2,作品の内奥に関する調査については、同じく『鎌倉管領九代記』とその関連軍記・群祖類についての内容調査を行うことが課題であった。『鎌倉管領九代記』については、本年度7月に『近世文藝』98号に論文が掲載された。また『鎌倉管領九代記』をめぐる軍書類の考察については、『北条記』関連書との内容考察を、研究会での口頭発表等を行いつつ現在も行っている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、今年度に引き続き、『北条記』関連書についての1書誌調査と2内容分析を行う。考察の結果は、今年度中に論文として投稿する。 また、『鎌倉管領九代記』『北条記』等の関東地方の軍書だけではなく、『浅井物語』等の関西地方の軍記についても調査を始める。それに当たっては、軍書としてのみならず、仮名草子としての性格についても考察したい。
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