「近世初期・前期の近世軍書における生成・展開と流布についての基礎的研究」について、最終年度である平成26年度においては、「研究計画・方法」に従い、1,作品の流布に関する研究、2,作品の内容に関する考察について、以下のような研究を行った。 1,作品の流布に関する研究…(1)近世軍書についての参考書『戦国軍記事典 群雄割拠篇』『戦国軍記事典 天下統一篇』『室町軍記総覧』(和泉書院)等を手がかりに、室町末~近世前期に成立した軍書300作品について、書名・成立刊行年・著編者・本の体裁・諸本系統の一覧を、前年度に継続して作成・整備させた。(2)関東の戦乱を記した軍書で近世期の文芸に大きな影響を及ぼした『北条記』について、前年度に継続し、諸本調査を行った。とくに全国図書館等所蔵の『北条記』関連本のマイクロフィルムを多く所蔵する国文学研究資料館にて諸本調査を行い、情報をデータベース化した。(3)『北条記』を板本化した唯一の軍書『北条盛衰記記』(寛文十三年序)について、玉川大学図書館・駒沢大学図書館・日本大学図書館等の所蔵本について書誌調査を行った。その結果、諸本によって大幅な板木の修訂が行われていることがわかった。 2,作品の内容に関する研究…(1)上記の参考書等を手がかりに、近世軍書諸作品の内容と特徴、軍書史における位置づけについて整理し、データベース化した。(2)『北条記』については、諸本によって異同が大きいため、本文をデータ化し、比較を行った。(3)『北条盛衰記』についても、諸本によって大幅な修訂が行われているため、本文でデータ化し、内容比較を行い、修訂の意図について考察した。(4)近世軍書と室町時代物語や仮名草子などの文芸作品との関わりについて考察した。 以上の研究を、博士論文としてまとめ、提出・受理された。
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