本研究の開始までに蓄積してきた近世初期出版史の研究成果を土台にして、出版が開始された当初の版権意識の在り方、当時の草紙を出版する書肆の中で特有の位置にある鱗形屋の動向調査、古浄瑠璃出版の様相,挿絵を通してみた初期出版界の様相について、それぞれ論文にまとめた。こうした本研究における成果も踏まえて最終年度である2015年には、近世初期出版界の京都と江戸と伊勢の関係や、ジャンルごとに異なる出版の様相等からみえてくる当時の文学の醸成されていく様を論文としてまとめた。この論文は文学史の問題、版権意識の問題、ジャンル意識の問題等について通説の再考をせまるものであり、高い評価を得ている。
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