研究課題/領域番号 |
24520218
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
小助川 元太 愛媛大学, 教育学部, 准教授 (30353311)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国文学 / 中世後期 / 百科全書 / 『壒嚢鈔』 / 『後素集』 / 『源平盛衰記』 |
研究概要 |
当該年度は、『壒嚢鈔』『後素集』のデータベース化の作業、百科全書的テキストの構成分析を中心に行った。『壒嚢鈔』のデータベース化はあまり進まなかったが、その代わりに、以下の成果があった。 1. 「禅林の文化と説話」をテーマとするシンポジウムにおいて、『後素集』を題材とした「画題解説と説話」と題する研究発表を行った。 2. 『壒嚢鈔』編者行誉に関する研究として、京都国立博物館本『八幡宮愚童訓』の特徴を分析した「行誉書写本『八幡宮愚童訓』考」と題する研究発表を行った。 3. 当該研究における対象作品の一つである『源平盛衰記』について、その特徴の一端を明らかにする「『源平盛衰記』の方法―〈通盛最期〉を中心に―」と題する研究発表を行い、論文として発表した。 4. 『後素集』研究の一環として、数年前から行っている和訳本『帝鑑図説』の電子化作業と翻刻本文の公開(巻5~6)を行った。 1については、9月1日に開催された伝承文学研究会大会におけるシンポジウムで、司会と発表を行った。おかげで『後素集』の電子化作業や構成分析作業は進んだが、その作業の中で、『後素集』については、内容の解釈や典拠資料を考える上で、諸本による校合作業が必要であることを痛感した。そこで、今後の作業としては、電子化と同時に異本の校合作業を行うことにした。『後素集』については、国文学や美術史の研究者にとって、今後ますます重要となってくる作品であることから、校合テキストの公開が望まれるものである。2については、『八幡宮愚童訓』書写という活動そのものが行誉の真言僧としての立場や思想に繋がる問題であると同時に、『壒嚢鈔』の内容にも影響を与えていることがわかってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
『後素集』については、シンポジウムでの研究発表という形で、本文の電子化作業・構成分析といった基礎的作業に基づいた研究の成果を残すことができた。さらに、その作業過程で、電子化を進める上で、諸本の校合という新たな作業が必要であることに気づくこともできた。また、本研究の対象作品である『源平盛衰記』についての研究も順調に進んでおり、年度内に研究発表、論文発表という具体的な成果を残すことができた。『壒嚢鈔』については、編者である行誉書写本(京都国立博物館蔵)『八幡宮愚童訓』に関する研究発表を行うことができ、諸本構成の問題を見つけることができた。ただし、その反面、『壒嚢鈔』のデータベース化作業があまり進まなかった。
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今後の研究の推進方策 |
『壒嚢鈔』のデータベース化と『後素集』のデータベース化を同時に行うのは無理があるため、25年度は『後素集』のデータベース化を優先して行うこととする。また、今年度は『壒嚢鈔』『月庵酔醒記』『後素集』の構成分析や成立環境についての分析を行い、中世後期の百科全書に関する論考としてまとめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度は調査用としてノートパソコンを購入したが、25年度は、現在使用中の研究室のデスクトップパソコンに不具合が生じているため、新たなデスクトップのパソコンを購入予定である。また、『後素集』の諸本調査や関連する研究会・学会出席のための旅費が必要となる。なお、諸本調査では、場合によってはマイクロ撮影・紙焼きのための費用も必要となろう。さらに、軍記関係・中世史関係・仏教関係・絵画資料関係の書籍も継続して揃えていきたい。
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