本研究の主たる目的は、中世後期における政治や文化を支えた知の問題を、百科全書的なテキスト群の生成と享受という視点から解明することである。『アイ嚢鈔』『後素集』『源平盛衰記』を中心に、『塵荊鈔』『筆結物語』『帝鑑図説』『八幡愚童訓』なども研究対象に加え研究を進めた。その結果、多くが持つ問答形式は、応仁の乱前後から安土桃山時代にかけての学問のスタイルを反映したものである可能性が高いこと、禅林での最先端の学問が、それらに平易な形で入り込んでくる傾向にあること、そして、百科事典的傾向を持つ作品の多くが、武家の子弟を対象として書かれた可能性があることなどがわかってきた。
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