最終年度は、収集した実録の内容分析に基づいた、解題を執筆を行う活動を中心とした。とくに、弘前市立図書館が所蔵する敵討ち物実録については、国文学研究資料館のマイクロフィルム資料に収められていないものが相当数あることが判明し、現地でのデジタル撮影を行った。解題原稿については、弘前市立図書館所蔵のものを中心とし、今年度は、20点の解題を作成した。未報告ではあるが、これらの中には、相似した筋立てを持ちながら、内容を少し変え、異なる書名を持つ実録もみつけることもでき、実録の筋立てを作る方法を考えるうえで、今後の参考になった。 また、敵討ち物実録のうち、事件そのものを創作してしまっている事例に注目し、とくに昨年度に学会での口頭発表を踏まえ、『荒川武勇伝』を典型例として、悉皆的調査を行いつつ、物語中にみえる趣向を分析して、敵討ち物実録の創作の方法について、ひとつの見解を論文にて報告することができた。 この他、一昨年度より行っていた『敵討会稽錦』の翻刻のうち、今年度は巻四・巻五について翻刻し、完成をみている。
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