研究課題/領域番号 |
24520221
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
高橋 秀晴 秋田県立大学, 公私立大学の部局等, 教授 (40310982)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | プロレタリア文学 / 種蒔く人 / 小牧近江 / 金子洋文 / 今野賢三 / 藤田嗣治 |
研究概要 |
年度の前半は、継続研究課題「新資料による小牧近江研究」(基盤研究(C)、仮題番号20520167)の総括として、小牧のパリ時代に関する現地調査を行った(2012年7月31日~8月12日)。その際、これまで等閑視されてきた藤田嗣治との交友関係を視野に入れることとした。 まず、小牧が頻繁に出入りしていた場所(アンリ4世校、パリ法科大学、オデオン通り、サン・プリ家)について、小牧の自伝『ある現代史』および先行研究と照合しつつ調査した。小牧にシャルル・ルイ・フィリップを読むよう勧めたマダム・ムニエが経営していた書店跡を特定するなどの成果があった。また、小牧がアンリ4世校中退後住んでいた場所を特定すべくヴィクトール通りを調査、成果は得られなかったが、小牧が藤田と出会ったカフェ・ロトンド、藤田の「ジュイ布のある裸婦」(パリ市立近代美術館)等を確認することができた。さらに、ブリュッセルにて小牧の父栄次が出席した第1回万国議員会議の開催状況を調査、日本大使館に資料検索を依頼したが、新しい情報は得られなかった。 一方、藤田嗣治が洗礼を受けたランス大聖堂、最後の仕事となったフジタ礼拝堂等をめぐり、藤田晩年の心境を確認した。その後、南仏における藤田の活動と現地における評価について調査した。 後半は、主に小牧と金子洋文の書簡を照合し、二人が再会以来終生親友として家族ぐるみで交際している様子を確認した。 以上の成果は、放送大学秋田学習センター面接授業「秋田の風土と文学」(2013年1月5、6日、於:放送大学秋田学習センター)、民主文学第37回山の文学学校「プロレタリア文学の作家たち」(2013年1月11~13日、於:ホテル山王閣)等において公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
小牧近江研究を総括し金子洋文との接点を再確認した点で、前課題との接続はうまく為されたと考えられる。また、土崎図書館所蔵資料の確認等の基礎作業も、同図書館との協力関係を結びつつ順調に進行している。 研究上得られた新しい情報や知見は、日本文学同好会「金子洋文と『種蒔く人』」(2012年4月1日、於:あきた文学資料館)、同「金子洋文と『文芸戦線』」(2012年4月22日、於:あきた文学資料館)および教員免許状更新講習「秋田の近代文学」(2012年7月30日、於:秋田県立大学)等において発表した。 反省すべき点としては、時間配分に失敗したため、今野賢三書簡の分析に着手できなかったこと、研究成果を活字にできなかったことが挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
まず、予定通り遂行できなかった今野賢三書簡の確認・分析に早急に着手し遅れを取り戻す。 その上で、以下の作業を遂行する。①武者小路実篤書簡の翻刻・分析を通して、具体的な交友状況を把握し、洋文における思想と文学の問題について考察する。併せて、武者小路実篤にとっての洋文の存在意義についても検討する。②有島武郎書簡、志賀直哉書簡、川端康成書簡の翻刻・分析を通して、具体的な交友状況を把握し、洋文と白樺派・新感覚派との関係について考察する。併せて、有島、志賀、川端にとっての洋文の存在意義についても検討する。③青野季吉、前田河広一郎、山川菊栄等文学史上重要な作家たちの書簡の翻刻・分析を通して、具体的な交友状況を把握し、洋文の文壇における位置について考察する。④伊藤永之介、松田解子、渡邊喜惠子ら、秋田出身の作家たちの書簡の翻刻・分析を通して、具体的な交友状況を把握し、洋文の同郷意識及び相互の影響関係について考察する。 以上を通じて得られた成果を、学会発表、論文発表、講演等で公表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
武者小路実篤、有島武郎、志賀直哉、川端康成、青野季吉、前田河広一郎、山川菊栄に関する書籍類の購入に約30万円、金子洋文遺族・関係者の取材および国会図書館等における調査のための旅費に約20万円支出する予定である。
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