研究課題/領域番号 |
24520223
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
小林 直樹 大阪市立大学, 文学研究科, 教授 (40234835)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 無住 / 禅林 / 学問 / 南宋 / 東福寺 / 宗暁 / 法華経顕応録 / 入宋僧 |
研究概要 |
無住の学問基盤解明の一環として、彼の著作中の説話的記事に投影している南宋代成立典籍について調査した。その結果、浄善重撰『禅林宝訓』(『沙石集』)、王日休撰『龍舒浄土文』(『沙石集』)、宗暁撰『楽邦文類』(『聖財集』『沙石集』裏書)、同『法華経顕応録』(『雑談集』)、陳実編『大蔵一覧集』(『沙石集』『雑談集』)、『如々居士語録』(『雑談集』)との直接・間接の影響を指摘することができた。 如上の文献のうち、とりわけ『法華経顕応録』と『如々居士語録』は、従来本邦における享受がほとんど認められないとされてきた書物であるだけに、無住による摂取は極めて注目されるものである。東福寺や寿福寺といった禅林で学んだ無住は、入宋僧によってもたらされたそうした書物を披見する機会に恵まれたものと推定される。実際、『禅林宝訓』『楽邦文類』『大蔵一覧集』『如々居士語録』については、無住の師である東福寺円爾の将来典籍を核として成る『普門院経論章疏語録儒書等目録』に書名が挙げられており、無住がそれらを披見しうる環境にあったことが裏付けられる。 本年度の研究は、無住の著作が、入宋僧の将来した典籍とその講義という、当時の最新の情報知識によって花開いた成果という面が大きいこと、その意味で無住自身は入宋してはいないものの、その著作は同時代の東アジア世界に開かれた性格をも有することを明らかにした点に重要な意義があると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
無住の学問基盤の究明に関して、今年度の研究計画で予定していた部分についてはほぼ調査を完了することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
無住の学問基盤については、説話的記事以外の部分における調査・分析に踏み込むとともに、もう一つの研究テーマである遁世僧ネットワークについても、高野聖の問題を切り口に調査・分析に着手する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし。
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