研究課題/領域番号 |
24520225
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
河合 眞澄 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (00169674)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 役者評判記 / 挿絵 / 絵入狂言本 / 出版 |
研究概要 |
歌舞伎の画像資料研究の端緒として役者評判記の挿絵資料収集を企図し、平成24年度には『歌舞伎評判記集成』所載の挿絵を抽出して、約600枚の拡大画像資料を作成し、検討に供することとした。また、この画像資料に描かれている演目の絵入狂言本が存在する場合には、その写真資料を合わせて入手し、所収の挿絵を比較資料として用意した。 これらの資料にもとづいて共同研究会を年間6回実施し、正徳年間から享保年間にかけての役者評判記挿絵を子細に検討して行った。その結果、挿絵中の評語は画像全体に示されている演目の評価ではなく個々の役者に対する評語であること、上演開始から出版までの時間を短縮する目的で挿絵を省略する場合が見られること、挿絵と評文とが一致しない例があることなど、現在まで判明していなかった事実が新たに明らかになった。他に、絵入狂言本の挿絵は分担して描かれた可能性があることなど、役者評判記挿絵以外の画像資料に関する新事実も同時に指摘することができた。画像自体の究明ばかりではなく、当時の本屋(出版業者)の競争の実態も一部判明し、これらの成果に関連して研究代表者および研究協力者が論文を発表あるいは準備中である。 役者評判記の挿絵資料をデータ化することについて、研究会の参加者で協議したが、整理にあたって記録する項目が問題となり、上演年月・演目名・上演場所・登場する役者名などはどの挿絵にも共通するものであって記録できるが、画中の評語の種類および数量・重複して登場する役者名の扱い・名前の記載されていない役者などをどのように記録するかは、今後の研究会での継続課題にすることとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
役者評判記挿絵の資料収集については、拡大資料の作成を計画通りに終了した。関連する絵入狂言本の写真資料収集も、正徳年間のものについてはほぼ終えている。データ化を平成25年度以降に進めるため、高性能のスキャナーを購入して、準備は整った。 研究会の開催も6回を数え、資料検討の中で毎回新たな発見があり、着実に役者評判記挿絵の研究を進めている。とくに、内容的には新事実を多く発見して期待以上の成果を挙げている。 研究成果の公表は、論文執筆を完成させて発表したものもあるが、準備段階にとどまっていて次年度に持ち越したものがある。これについても、平成25年度には発表予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の補助金はほぼ使い切っており、研究計画に沿って研究を進めることができた。 来年度は、収集した資料のデータ化を考えていて、デジタル・アーカイブ化を目指している。そのために、高性能スキャナーによる画像資料の読み取りを行い、整理する際の便を図る。 これに付随して、当初の研究計画には入っていなかったが、大阪府立大学学術センター図書館所蔵の貴重書となっている歌舞伎番付の整理を合わせて行う予定にしている。これは、将来的に同じくデジタル・アーカイブ化することが期待されている資料であり、画像資料研究の副次資料としてもデータ化が不可欠である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の残額は3,902円であり、ほぼ予算を消化した。この残額は次年度の予算と合わせて、スキャナーによる画像資料の読み取りのための消耗品購入に充てる予定である。 他に、読み取り作業のためにアルバイトを雇用する必要があり、また、データの入力にも人員を要するため、研究費のかなりの部分を非常勤職員(事務補助員)雇用に使用しなければならない。 研究代表者・研究協力者が歌舞伎の上演実態調査等に使用する旅費にも、相当の金額を充当する必要がある。
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