歌舞伎の画像資料研究の端緒として役者評判記の挿絵資料研究を企図し、平成24年度に準備の整った拡大画像資料を元に、平成25年度からその検討に入ったが、平成26年度も引き続き検討を継続した。 研究協力者川端咲子氏・原田麻衣氏・森谷裕美子氏・渕田恵子氏とともに年間6回の共同研究会を実施し、主として享保年間の役者評判記の挿絵と評文の補完関係を検討した。また、絵入狂言本の挿絵に着目し、役者評判記に記載のある演目の絵入狂言本について、本文から内容を子細に知り、挿絵との整合性や補完関係を確認した。絵入狂言本は役者評判記より先に刊行されるため、役者評判記の挿絵は絵入狂言本の挿絵を粉本としているものが多く、中にはほとんどすべてが絵入狂言本の挿絵に依拠している場合も見られた。さらに流用の方法を考察し、構図の反転や別の場面の挿絵の組み合わせなど、様々な方法が取られていることを見極めた。 如上の研究につき、研究代表者は絵入本学会等2回の学会発表を行い、役者評判記挿絵の画像資料を紹介し、実際の上演との関わりを考察した。この発表にもとづき、平成27年度中に2本の論文掲載が確定している。研究協力者川端咲子氏・原田麻衣氏・森谷裕美子氏も資料紹介等の実績を挙げた。 また、データペース公開の基礎作業の一環として大阪府立大学学術情報センター図書館が所蔵する貴重書のうち、番付・絵尽しの画像データを複写し、整理に着手した。これは今後の研究に貢献する資料であり、平成27年度から29年度に行う基盤研究(C)「画像資料の総合利用による歌舞伎上演実態の研究」において研究を継続する予定である。
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