研究課題/領域番号 |
24520226
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
村田 右富実 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (30244619)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 万葉集 / 統計学 / 文字資料 / 短歌の声調 |
研究実績の概要 |
今年度は、昨年度の研究成果である混合効果モデルを利用した万葉歌の声調解析とは別の面から、研究を進めた。1-Class Support Vector Machineを用いて、『万葉集』の1字1音の文字を解析し、その筆録者推定を重点的に行った。その研究結果は11月に上代文学会秋季大会において発表し、現在成稿に向かっている。 また、31音からなる短歌について、新たな方法による解析の準備を始めた。具体的には、まず、1音目に用いられている音を拾い出し順位付けをする(万葉短歌の場合は「あ」が最も多い)、以下、2音目3音目と31音目まですべて各音毎に順位付けをする。すると、最も万葉短歌らしい音の並びが見えて来る。それを具体的に一首一首に還元することによって、万葉短歌らしい歌を客観的に見出すことが出来るようになる。ただし、それはあくまでも計算上のことであり、個別論的に万葉短歌らしいらしくないを論じるのは生産的でないだろう。そこで、巻毎に解析することによって、どの巻が万葉短歌の一般的な様相からどれくらい外れているかを、検討している。こちらは27年度中に学会発表する予定である。 さらに、『万葉集』以外のテキストにも解析の手を伸ばし始めた一年であった。『日本書紀』は、これまでα群、β群に分類することが行われているが、それは個別論の積み重ねの結果見えてきたものであった。これを、全体論から解析可能かどうかを検討している。こちらは一般的なward法によるクラスタリングをする。ある程度の解析結果も出ているので、こちらは27年度中に研究会で発表し、上代文学会の叢書に収める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
様々な統計学的解析手法を用いて、『万葉集』に限らず、上代文献全般への解析にも乗り出しており、今までにない方法による客観的な上代の文字列についての記述が可能になりつつあるため。特に『古事記』と『日本書紀』の文字列全体からの解析は今まで全く手を付けられていない分野であり、あらたな発見の可能性が高い。
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今後の研究の推進方策 |
現在、万葉歌の書記者、万葉短歌の声調、『日本書紀』の分類という3点について、集中的に進めているが、間もなく、『古事記』についても解析を始める予定である。そのための準備も進んでおり、『日本書紀』と『古事記』とを両輪の形で研究成果が出そうである。具体的には、万葉歌の解析で有効だった1class supprt vector machineに超幾何検定を組み合わせた解析方法が、これからの主軸となることが期待されている。
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