研究課題/領域番号 |
24520228
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 熊本県立大学 |
研究代表者 |
鈴木 元 熊本県立大学, 文学部, 教授 (40305834)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 菊池 |
研究概要 |
『菊池風土記』研究のための基礎資料の収集、整備を行い、註釈作業の準備段階に入った。これまで一般に提供されている『菊池風土記』テキストは、『肥後文献叢書』所収のものであったが、これはその底本についての情報が明示されておらず、テキストの信頼性については、検討の余地を残していた。そこで、まずは伝来奥書を有する本学蔵本について、学生アルバイトを用い巻一の翻刻を行った。 なお、本学蔵本以外のテキストとしては、東洋文庫蔵本の複写を入手した。なお、収集すべきテキストは残っているが、活字テキストを相対化するための準備段階としては、一定の写本テキストを集めることができた。 また、菊池市の協力を得て、同市公民館所蔵の和本調査を実施した。これには、本学の学生有志、同僚も参加することで、地域研究と教育とが緊密に連携した研究スタイルを模索できたのではないかと思われる。また、同様の試みを水俣市立図書館の淇水文庫においても実施し、学生の書誌調査能力の育成の一助とした。 最後に、註釈作業に入るための資料整備として、『肥後国志』『肥後国絵図』『鎮西菊池軍記』等の郷土史関連資料の収集を行った。これと並行し、先行研究の確認をすすめたが、その調査の過程において、『菊池風土記』に先行する地誌資料、『菊池温故』が重要な位置を占めることが判明した。ただし、これも伝本調査から徹底する必要があり、改めて資料収集にとりかかったところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、本学蔵本の翻刻作業が終了し次第、学生の自主研究を組織することで註釈作業を進める予定でいたところ、学生の組織化が必ずしも順調に進まず、かつ一年生ばかりの組織となってしまい、上級生の参加が得られなかった。そのため、24年度末時点では、底本と予定しているテキストの一巻分の電子入力を終えたに留まっている。初年度で註釈作業に多少なりとも着手する予定からすれば、やや遅れていると言わざるをえないため。
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今後の研究の推進方策 |
まず学生の自主研究と連動した形で、巻一の註釈の具体的作業に入る。それとあわせて、『菊池風土記』とかかわりの深い地誌資料である『菊池温故』についても調査を進める必要がある。まずは、『菊池温故』の最善本かと推測される東京大学史料編纂所の謄写本を入手し、内容の点検を行う必要がある。同時に、簡易に複写の入手できるものについては、他の諸本も収集しつつ、史料編纂所本の位置づけを考えていく。『菊池温故』のテキスト批判を進めながら、同時にその成果を『菊池風土記』註釈に活かし、両者の関係について見通しを立てていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
新たに『菊池温故』など、関連した地誌資料の重要性が明らかとなってきたため、それらの複写代金が必要である。また、図書館等への調査の必要性も出てくる可能性が高い。また、註釈作業を進めながら、順次それを入力していく作業が必要で、ここには学生アルバイトを雇用する予定である。 また註釈の進展に伴い、郷土史関連史料や、菊池周辺の歴史に関する歴史学分野の研究書が必要になる可能性が高い。それたの購入費に宛てる予定である。
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