研究課題/領域番号 |
24520233
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
中田 幸司 玉川大学, リベラルアーツ学部, 教授 (30407697)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 日本文学 / 古代文学 / 平安宮廷歌謡 |
研究概要 |
本研究では平安宮廷歌謡『催馬楽』の基礎的研究環境を整えるため、未刊行注釈資料の収集・調査・分析とともに、既存の詞章の分析、表現史上の定位、主題をとらえながら、往時の平安人の歌謡の注釈・享受史を構築することを目指した。 その結果、単著『平安宮廷文学と歌謡』(2012年12月、笠間書院)を上梓した。なお、同書は2013年5月に日本歌謡学会第30回志田延義賞を授与されるに至った。また、論文として「催馬楽『席田』攷―寿歌の背景にみる和歌の歌謡化―」(2013年3月、玉川大学リベラルアーツ学部研究紀要第6号)を発表した。これらはいずれも今日に至るまでほとんど探究されてこなかった詞章の分析・表現史の定位、主題を一曲ずつとらえなおした成果であり、『催馬楽』が単純に民謡から発生したと理解された研究史に対して異論を唱えるものとなった。 一方、資料収集の結果としては、国立国会図書館より一条兼良『梁塵愚案抄』(請求番号ほ69、わ92)各2冊、『神楽歌考察并催馬楽考』(同841-39)、『催馬楽注秘抄』(は57、213-62)各1冊、さらに橘守部『催馬楽入文』(同202-45)、今井似閑『催馬楽註釈』(同213-270)、宮城県立図書館所蔵『梁塵愚案抄』(911.6り1)の資料の閲覧、複写を依頼し実施した。これらの資料に対しては鋭意翻刻、分析を実施し、公刊を行うことで従来見過ごされて生きた総合的な注釈史が立ちあらわれ、文学史上においても補完する意義は高い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初から予定していた資料の複写に対し、マイクロ化を施す必要があるもの対して予想以上に時間がかかったことと、詞章の分析対象においても納得のいく結論を得るまで探究できたとは言い難い。ただし、『平安宮廷文学と歌謡』の上梓により、詞章の成り立ちの方向性は予想以上に定まりを見せたことは評価したい。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に実施したことをふまえ、さらに、都内近県の所蔵する『催馬楽』関連の注釈書の閲覧、分析、可能なものの複写を実施していく。とくに慶應義塾大学斯道文庫蔵『催馬楽歌字之巻』・『催馬楽歌評釈』、東京大学蔵『催馬楽注釈』を率先して実施していく予定である。一方で詞章の分析として「安名尊」・「山城」の分析を行う予定としたい。また、大学院生の協力を得て、作業を実施するようにしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度、想定外の業務により時間が十分確保できず、購入できなかった撮影用ハイビジョンカメラ(7万5千円)資料記録用のPC(25万円)、注釈書等書籍購入(60万)、複写代(20万)を充当させ、分掌が前年度に比べ減った分、旅費(京都2回、高山2回、福岡2回各3日間、50万)を活用して研究を進める計画である。
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