研究課題/領域番号 |
24520235
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
紅野 謙介 日本大学, 文理学部, 教授 (20195671)
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研究分担者 |
高 榮蘭 日本大学, 文理学部, 准教授 (30579107)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 検閲 / 植民地 / 言論統制 / 近代文学 / 日韓関係 |
研究概要 |
今年度は、内務省関係や旧植民地地域の検閲関係資料の収集にあたる一方、9月に論文集編集に向けた企画会議と研究会開催を予定していた。この計画通り、「日韓検閲国際会議 亀裂・痕跡・錯綜 検閲の拡張と変容」と題した研究会を開催した。李旻柱(極東大学)「朝鮮語新聞における写真検閲の研究―新聞検閲のテクストを中心に」、鄭鐘賢(成均館大学)「検察調書の「感想録」における転向の語りと転向小説」、五味渕典嗣(大妻女子大学)「ペンと兵隊―戦記テクストの情報戦」、金子明雄(日本大学)「「風俗壊乱」へのまなざし―日露戦後期の〈筆禍〉をめぐって」、榊原理知(早稲田大学)「移動と翻訳―占領期小説の諸相」、權明娥(東亞大学)「翻訳可能性の敷居―ドルセとナナ」といった発表報告に加え、韓基亨(成均館大学)、鄭根埴(ソウル大学)、李惠鈴(成均館大学)、高榮蘭、座長・紅野といったメンバーによる総合討議を行った。この会議と前日に行った打合せの会合を通じて、互いの研究主題を確認し、歴史的地域的な偏差に応じた検閲制度と文学言説の統制をめぐる研究の方法的諸問題の認識共有をはかった。さらにその後、課題として浮上した問題点について、東京とソウルで頻繁に連絡をとりあい、研究分担者である高氏のソウル行きなどをへて協議を重ねた。この結果、日本と韓国についての論点のずれや認識の重なり具合がより明確になった。同時に、こうした国際的な共同研究と同時に検閲関連資料の収集と調査を重ね、データの入力を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「日韓検閲国際会議 亀裂・痕跡・錯綜 検閲の拡張と変容」に参加したメンバーを以下に掲げる。日本側では主宰者のほかに五味渕典嗣(大妻女子大学)、金子明雄(日本大学)、榊原理智(早稲田大学)、韓国側からは韓基亨、李恵鈴、鄭鐘賢(成均館大学校)、鄭根埴(ソウル大学校)、李旻柱(極東大学)、權明娥(東亞大学)氏ら。とりわけ韓国で検閲研究会を組織し、韓国における検閲や言論統制の歴史を研究してきた学者たちを招聘し、充実した議論を重ねることができた。この報告内容は冊子にするとともに、ひきつづき議論をふまえた論文化を進めているところである。また、以後も頻繁にメールで連携をとりあいながら、互いの研究の進展を確認。すでに3月の年度末の段階で八篇の論文ができあがっている。
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今後の研究の推進方策 |
前回会議のほか、日韓の検閲研究を進める上で欠かせない研究者たちとも会合を重ね、研究協力を依頼している。その結果、日韓で20本近い論文が集まる予定で、今後はこれを日韓双方で論文集にすることを進める。また、個別事例の羅列になることを避けるために、7月に主要な研究者数名による議論の場を設け、そこで双方向の読者に向けた問題点の整理や研究上の案内を加える。また、検閲年表の作成も進めており、日本と韓国のそれぞれの検閲制度の違いや事象を一覧できるようにすることを目指している。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記の方策に基づき、7月に韓国より韓基亨、李恵鈴、鄭根埴氏を招聘し、通訳を交えて議論の場をつくる。これを記録化し、相互に翻訳チェックした上で、研究上の交通整理に役立てたい。研究費の大半はこの会議の開催と通訳・翻訳料に費消する予定である。それ以外はひきつづき検閲関連資料の収集と調査を重ね、データの入力を行うこととする。
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