研究課題/領域番号 |
24520236
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
島村 幸一 立正大学, 文学部, 教授 (70449312)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 『琉球国由来記』 / 『琉球国旧記』 / 『古事集』 / 『周藺両姓記事』 / 『球陽』 / 琉球の家譜 / 琉球の歴史叙述 |
研究実績の概要 |
本年度は、①単著「『古事集』(鎌倉芳太郎資料)の叙述-『琉球国由来記』と『琉球国旧記』にふれながら-」(『立正大学大学院紀要』第33号、立正大学文学研究科、2017年3月、PP.27-60)、②共著「「琉球文学」資料注釈3『周藺両姓記事』上・下」(『立正大学人文科学研究所年報』第53号、PP.37-53・第54号、PP.33-68、立正大学人文科学研究所、2016年3月・2017年3月)を発表した。③『おもろさうし研究』(KADOKAWA、2017年、全291頁)を刊行した。 ①は本研究課題の中心となる論文「『琉球国旧記』の編纂-『琉球国由来記』から『琉球国旧記』へ-」を発展させた論文で、『琉球国旧記』の枠組みを作ったと考えられる『古事集』の叙述を考察した論文である。これによって、18世紀初頭における琉球王府の地誌の編纂にかかわる主要な問題が、明らかになったと考えられる。 ②は、前年度報告した「『周藺両姓記事』(糸嶺家伝)-家譜の外縁にある物語-」の注釈を共同で行った成果である。「記事」は、公式文書である家譜の周辺あるいは、外縁にあって、家譜を支える「家伝」といわれる資料である。これを琉球文学の資料として位置付け、注釈を付けて公表し、琉球王府の編纂事業を支える当時の歴史意識を明らかにしようとした。 ③は『おもろさうし』に関連した著書である。『おもろさうし』は古琉球時代(1609年の島津侵攻以前の時代)の琉球王府の儀礼歌集であるが、今日伝わる『おもろさうし』は1710年に再編纂されたものである。これも広くは、18世紀初頭の王府編纂事業の影響下にある編纂事業といえる。特に序章の「『おもろさうし』の構成」では、附巻に位置すると考えられる第22を通して、当時の歴史意識の問題を考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題にとって重要な資料である『古事集』が視野に入って、その叙述の分析を本年度行ったが(上記①の論文)、『古事集』の中に『球陽』の資料になったと考えられる「順治康煕王命書文」という資料があり、この分析が次のテーマとしてみえてきたため。
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今後の研究の推進方策 |
上に記した「順治康煕王命書文」をもとに『球陽』の歴史叙述を検討した論考を発表する予定である。このことによって、18世紀初頭から中期にかけての琉球王府の編纂事業にかかわる編纂意識、あるいは歴史意識が明らかになってくると考える。その論考を制作するために、沖縄県に出張し、資料等の収録や現地調査をしようと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究テーマを明らかにする上で重要であると考えられる『古事集』(鎌倉芳太郎資料)の存在を、研究をしていくなかで知った。それを明らかにした論考(上記①)を本年発表したが、『古事集』に収録されている「順治康煕王命書文」の存在を知った。「王命書文」は『球陽』の資料のひとつになったと考えられる資料である。『球陽』は18世紀初頭から始まった琉球王府の編纂事業の最後に位置する正史であり、二つの比較を通して『球陽』の叙述を明らかにすることが、本研究を深めることになると考え研究期間を延長した。
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次年度使用額の使用計画 |
『古事集』の中に収録されている「順治康煕王命書文」と『球陽』の比較研究をして、18世紀初頭からはじまった琉球王府の編纂事業の最後に位置付く『球陽』の叙述を考察する論文を作成する。そのために、沖縄県に出張して資料収集と現地調査を行う。
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