研究課題/領域番号 |
24520237
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 和光大学 |
研究代表者 |
津田 博幸 和光大学, 公私立大学の部局等, 教授 (80318708)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | )仏典注釈 / )戒律経典 / 東アジア / 古代日本 |
研究概要 |
善珠『梵網経略抄』の本文校訂作業、善珠が同書に参照・引用した『梵網経』の先行注釈書の特定、引用元と引用文との異同の確認作業などを進めた。具体的には11回の研究会を開催し、『梵網経略抄』下巻の内「十重戒」と呼ばれる最も重い戒律の規定とその注釈について上記作業を終えた。 『梵網経略抄』の本文校訂については、そもそも写本の数が限られていることから、むしろ同書が引用した先行注釈書の本文との対比作業が重要で、特に多くを依用する『梵網経古迹記』の校訂と本文対比を進めるべきことが了解された。 いまだ『梵網経略抄』の全体的特質が把捉できたというところまでは至っていないが、以下のような点は明らかになりつつある。すなわち、善珠は主として新羅・太賢『梵網経古迹記』に多く依拠しているが、他にも唐・法銑『梵網經菩薩戒疏』を依用する箇所もあること、善珠は随所に改変を加えて引用していること、などである。特に後者は善珠の引用態度および独自説の特徴を明らかにするという本研究の目的に照らして重要な問題であり、その答えが徐々に明らかになりつつある。 『梵網経略抄』に見られる知見から古代日本の文化・思想・文学の〈読み直し〉をするという目的については、研究会に参加している連携研究者・研究協力者により少しずつ進みつつある。 なお、善珠関連の故地、すなわち、『梵網経』に依拠した最澄と論争した会津若松の徳一関連寺院、および奈良の善珠関連寺院を訪れ、臨地研究を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本文校訂と注釈作業はおおむね順調に進んでいるが、善珠が依用した先行注釈書の写本収集と本文校訂までは進めていない。また、注釈という基礎作業の途上にあるため、よりマクロな古代日本の文化・思想・文学の〈読み直し〉作業には至れていない。
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今後の研究の推進方策 |
注釈作業自体のペースを挙げること、可能なら合宿などにより研究会の回数を増やすこと、先行注釈書の写本収集を進めることなどが考えられる。
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次年度の研究費の使用計画 |
連携研究者・研究協力者を研究会に招聘するための旅費、諸写本の写真版収集、参考図書の購入、寺院等の臨地研究に使用する。
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