本研究によって得られた顕著な成果は以下のとおりである。 1)大宝2年派遣の遣唐使には、文書行政を始動させるための参考文献の収集が任務として課されており、『文館詞林』などを持ち帰ったらしい。2)『五経正義』『唐太宗実録』など初唐期の文献が、8世紀初頭には日本に将来され、作文の参考に供されていたことを実証した。4)安倍広庭「春日侍宴」(『懐風藻』所収)は、虞世南詩を享受していることが判明し、同詩を収録していたと思われる虞世南または隋煬帝の別集の将来が推定される。5)山上憶良の語彙形成には、仏教語彙が大きな影響を与えている。この傾向は、同時代の日本の文筆全般にも及ぼして考えることができる。
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