本研究で目的としているのは、近代における読書環境の歴史的な変化を明らかにしていくことであり、かつ、 それらの調査、研究を、近代文学の研究・教育方法として応用し、普及させていくことにある。より具体的な調査、研究としては、1)国内での近代読書史資料研究、2)海外での日本語蔵書史、読書環境調査、及び、3)文学研究・文学教育との連携の三つの方向で研究を遂行してきた。 1)については、明治期の出版、流通資料としてきわめて珍しくかつ重要な資料としてこれまでも調査してきた長野県松本市の高美書店の資料の復刻出版、及びその解説作成の作業を行ってきた。平成28年度には出版される予定となっている。2)については、東南アジア地域における日本語資料の調査、整理、分析を展開してきた。具体的にはカンボジアにおける日本語資料の調査、及びベトナム、インドネシアでの調査を進めた。ベトナムについては、国文学研究資料館との共同研究と連携させ、より規模の大きい調査として所蔵機関との協力のもと調査を進めている。また、インドネシアについては、インドネシア国立図書館に貴重書として所蔵されている日本語資料の撮影を全体にわたって行って作業を完了し、書誌データの作成を当該機関と協力しつつ進めている。 3)については、文学研究、教育方法と、読書の歴史についての研究を結びつける成果として、平成26年度に著書としてまとめ、刊行している。平成27年度は、この成果をもとに、実際の教育現場で同書に基づいた研究、教育活動を行い、さらなる問題点の発見と発展的な教材開発について検討を進めた。
|