研究実績の概要 |
本研究では、日本の近代文学の表現とメディア検閲とのかかわりを、第二次世界大戦前から戦中にかけて実施されていた内務省の検閲と、戦後日本において行われたアメリカ軍によるGHQ/SCAP検閲の相互関連性に焦点を当てながら歴史的に研究することを目的とした。文学にかかわる二つのメディア検閲の新しい資料を収集・整理したうえで、日本国内外においてこれまで個々に研究が進められてきた内務省とGHQ/SCAPの検閲の関連について検討を加えることで、新たな研究の基盤を形成し、その成果を国際的に共有するべく日本語と英語による発信を目指した。最終年度である2014年度は、前年度までの研究を継続して進めると同時に、研究成果を論文・学会発表・招待講演などで公表することにつとめた。その主なものは以下の3点である。論文:十重田裕一「植民地を描いた小説と日本における二つの検閲――横光利一『上海』をめぐる言論統制と創作の葛藤」紅野謙介他編『帝国の検閲――文化の統制と再生産』新曜社、pp.241-251、2014年、口頭発表(国際シンポジウム):十重田裕一「占領期言語統制下の創作と出版活動」Colloque international Paris Diderot大学、2014年9月18日、招待講演:十重田裕一、"Media Regulations and the Battle Over Literary Expressions in 1940s Japan."(1940年代日本のメディア規制と文学表現の葛藤)University of California, Los Angeles、2014年11月17日。上記以外にも、著書・学術論文等により、3年間の研究に基づく成果を発表していく計画がある。
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