研究課題/領域番号 |
24520242
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
鳥羽 耕史 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (90346586)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | サークル運動 / 記録 / 公共圏 / 実験場 / 安部公房 / 三島由紀夫 / 開高健 / 吉行淳之介 |
研究概要 |
戦後期の日本で広く普及していたサークル運動と広い意味での「記録」の運動の実態を明らかにするため、調査・研究を行なった。また、サークル運動において中心的なジャンルであり、しばしば共同的な形で制作された詩やルポルタージュなどの文学についても、同時代の前衛的な文学・芸術運動や政治運動との関連の中での研究を行なった。 まず、「記録」の問題については、問題意識を共有する東京国立近代美術館主任研究員の鈴木勝雄氏が企画した展覧会「実験場1950s」に協力し、関連して刊行された同名の論集に「「記録」が準備した公共圏」という論文を寄せ、サークルからテレビへ、とも言えるような「記録」の場の移行を検討した。同展については詳細なレビューも執筆し、その意義を検証した。 当時の運動の一つの中心でもあった安部の文学については、「没後十九年目の安部公房研究」で最近の研究の紹介をし、「三島由紀夫と安部公房のボクシング――ラジオドラマの実験について」で三島由紀夫との比較をし、「安部公房の「天使」と岡本太郎の「電撃」――啓示としての過去の出現」で「天使」という初期作品の出現について論じ、そして『震災後に読む文学』で『第四間氷期』を現在読み直す意義について検討した。 また、「商品としての/商品についての小説――開高健「巨人と玩具」と吉行淳之介「男と女の子」」では、高度成長期における文学と文学者のあり方について、タイプの異なる二人の文学者による類似したテーマの小説を通じて考察した。さらに戦争の時代を描いた文学の中でも傷痍軍人を扱った小川未明の童話について、『戦争を〈読む〉』で検討した。 サークル運動の資料収集、渥美半島関連調査などは継続して行なっており、次年度以降に成果を出せそうな準備を整えている状態である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サークル運動関連資料の電子化については遅れているが、資料収集は順調に進んでいる。一方でいわゆる純文学の面からの考察は予定以上に進められた。
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今後の研究の推進方策 |
「とけいだい」サークルについては、共同調査をしてきたメンバーがそれぞれ別のプロジェクトを抱えた状態になってしまい、調査が停滞している。同じ東海地方でも、渥美半島の中心となった杉浦明平について、前年度末の展覧会を契機とした調査が進んでおり、日記についても出版の計画ができる状態になってきたので、そちらを優先して進めたい。また、平中忠信氏の業績をまとめる作業も進行しており、こちらも次年度中には形にできそうである。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は大学での役職就任などに伴なう多忙により、出張や電子化の計画が予定通りに進められずに繰越金が生じた。次年度は調査や電子化を一層進めることにより、繰越金を効率よく使用していきたい。
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