研究課題/領域番号 |
24520245
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研究機関 | 桜花学園大学 |
研究代表者 |
寺島 徹 桜花学園大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (30410880)
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キーワード | 近世文学 / 俳諧 / 連句 / 蕉風 / 暁台 / 蕪村 / 也有 |
研究概要 |
2年目にあたる今年度は、連句資料に関する書籍の収集と書誌調査を継続し、とくに伝書における和装本の原典資料、マイクロ資料について引き続き調査を行った、各地の文庫、所蔵家の連句資料についてもあらたに書誌調査を行い、俳書に関する目録などの整理も行った。また、暁台・樗良らの連句作品の式目の遵守の度合いのデータ化に着手した。前年度より、整備した連句作品をもとに、俳人別に「去嫌」「指合」などの式目に関するデータの分析もはじめている。このような暁台・樗良の連句研究にくわえ、あらたに也有の資料調査にも着手した。也有と暁台の関係は師弟関係に近いものであり、也有資料の分析は、也有から暁台への連句文芸における影響を考える上で重要なものとなろう。也有は広範な俳論を草したことでしられるが、也有俳論をよみとく上で重要な新出也有書簡を調査、紹介することで、也有の連句における指向性を明らかにしようと試みた。その成果として、「宝暦期における横井也有の蕉風意識について―美濃派および露川門への対応を視座として―」(国語と国文学91(3))、「横井也有と飯田俳壇―桐羽宛也有書簡の紹介と俳諧指導の考察―」(連歌俳諧研究126号)を発表し、也有の美濃派批判が支考そのものへの批判というより、現実の俳壇を意識して批評したものであったことを明らかにした。その上で、発句のみならず連句における也有の美濃派、都会派俳諧への批判意識の一端について明らかにした。同時に、也有が俳諧の趣向性について疑念をもっている点についても、これまでかえりみられることのなかった「けやけし」という評語から分析した。暁台ら中興期俳人の連句観を考える上で、示唆的な評語となると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
連句関連資料に関する資料収集と書誌調査を行い、暁台・樗良・蕪村らの連句作品の式目遵守の傾向についてデータ化を進めている。その内容を公表するまでに至っていないが、3年目、4年目に随時、学会発表、論文等において成果を発表していく予定である。なお、暁台の連句研究を進める上で、派生的な研究として、暁台の師匠筋である也有の連句観をうかがう資料分析を行うこととなった。学会発表「也有の俳壇指導について―宝暦期における伊那俳壇の事例を中心に―」(俳文学会平成25年度全国大会)などで、この資料をもとに也有の指向性について考察した。申請時には予期できなかった資料であるが、本研究の時代的な潮流や背景について考察する上で看過できないものであり、也有の連句研究をも射程におくことで、本研究に深化がもたらされるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
資料収集、書誌調査については、あらたな資料の探索を試みながら、天理図書館綿屋文庫における判読不可能な箇所の閲覧など、2年目までに漏らしたものを中心に進める。暁台・樗良・蕪村の連句において看過されてきた式目からの考察・データ化を進める。也有の連句分析も進め、連句における「けやけき句」の特徴についても、江戸座と地方系という流派の違いに着目しながら調査を進めてゆく。また、従来、江戸中期の連句資料において、親句・疎句の視点より研究されることはほとんどなかったが、前句と付句の付筋について分析する上で重要な基礎作業と考えられる。暁台、樗良においても、蕪村の例を参看し、連歌俳諧辞書に加え、中興期の伝書などの文献も利用しながら、前句と付け句の関係性について分析してゆく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は、関東地区の機関への調査出張は予定どおりに行うことができたが、関西方面の機関へ書誌調査、資料収集に赴くことがかなわなかった。そのため、おおむね旅費の分にあたる20数万円の未使用額を次年度へ繰り延べることとなった。 関東地区にくわえ関西方面への書誌調査、資料収集について、25年度の分もあわせて行うこととしたい。また、一部を江戸期の書籍を含めた備品の整備、式目に関するデータベース化のための謝金に使用することも検討している。
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