研究課題/領域番号 |
24520247
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
中本 大 立命館大学, 文学部, 教授 (70273555)
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研究分担者 |
金 賛會 立命館アジア太平洋大学, 国際経営学部, 教授 (00331124)
二本松 泰子 長野県短期大学, その他部局等, 助教 (30449532)
山本 一 金沢大学, 学校教育系, 教授 (40158291)
中澤 克昭 長野工業高等専門学校, 一般科, 准教授 (70332020)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 鷹書 / 諏訪流放鷹術 / 放鷹文化 |
研究概要 |
当該年度は本研究の活動基盤となる鷹書研究会の例会を、平成23年5月5日(土) 、7月29日(日)の計2回開催した。また、同研究会が平成20年度以来毎年恒例として開催している放鷹文化講演会を10月28日(日)(テーマ:信濃の鷹狩り、於:長野県長野市)と12月1日(土)2日(日)(テーマ:富士と鷹狩り、於:静岡県富士宮市)の2回に渡って開催した。 その成果としては、まず、本研究の主要目的である宮内庁書陵部に所蔵されている諏訪流の鷹書類について、相応量のテキストを調査・蒐集することができた。それらはいずれも書誌情報を整理してデータベース化し、その文化的影響力の実態を明らかにしてゆくための研究を進める基礎作業を推進した。さらには、諏訪流の鷹書と所縁深い西園寺家やその縁戚関係にある持明院家の鷹書についても調査を進め、公家流の鷹書類の特性についても一部明らかになった(西園寺家の鷹書に関する研究成果は伝承文学全注釈叢書『立命館大学図書館西園寺文庫蔵鷹書類』2014年度内に三弥井書店から公刊予定)。その成果を以て、今後、武家流の放鷹術である諏訪流放鷹術の相対的な意義について明らかにしてゆく準備作業が整えられた。 また、放鷹文化講演会については、その参加人数が長野市で200人、富士宮市で600人と盛会であった上、NHKや地元新聞社などのマスコミに取り上げられ、本研究の成果を広く一般に広める機会となった。 その他、本研究のもうひとつの主要な目的である朝鮮の鷹書類についても研究が進んだ。当該年度は、朝鮮で成立した鷹書のうち、古本『鷹鶻方』について注目した。すなわち、韓国国立中央図書館蔵『鷹鶻方全』(古古7‐30‐44)の奥書を検討して、同書が我が国に伝来した経緯を明らかにし、日韓放鷹文化交流史の一側面について言及した。その成果は研究分担者である二本松泰子が公刊論文にして発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、全国に埋もれている鷹書類の発掘・調査を通じて、我が国において長い歴史を持つ放鷹文化の実相を解明することである。そのためには、本朝放鷹術の歴史においてその主流を担った諏訪流の鷹書類について研究を進め、我が国における放鷹文化の基幹となる部分を明らかにゆくことをまずは第一義としている。 そのための作業の一環として、本年度は研究分担者の二本松泰子が室町時代における諏訪流放鷹術の主流を担った京都諏訪氏の鷹書について調査を進めた。従来、諏訪流の放鷹術といえば信濃在地の禰津流のみが注目されていたが、当流が主流になるのは江戸時代以降である。それ以前の諏訪流の放鷹術については、代々の室町将軍家に庇護された京都諏訪氏の流派が最もさかんに流布・展開していた。このように我が国の放鷹文化史上重要な意義を持つ京都諏訪氏の携えた鷹術については、これまでほとんどその実態が知られていなかったが、本年度の研究によって、その一部が明らかになった。 さらに、本研究では韓国の鷹書類を調査・研究し、同国の放鷹文化を解明することによって相対的に我が国の放鷹文化の実相を明らかにしてゆくことも目指している。そのための作業として、同じく研究分担者の二本松泰子が韓国国立中央図書館蔵『鷹鶻方全』の諸本について調査・整理し、韓国における放鷹文化の実態を明らかにする手がかりをつかんだ。 そのほかにも、研究分担者である中澤克昭によって諏訪流の放鷹術と同時代に隆盛した持明院家の鷹書についての調査が進められ、公家流の鷹術の実態が明らかになった。それによって、武家流の鷹術である諏訪流が有する相対的な文化的意義を究明してゆく手立てが明確になった。 以上のことから、本研究の目的とする課題について、研究を推進してゆくために必要な調査・研究の成果が本年度においてはおおむね達成できたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
明治から戦前における我が国の国策に従って諏訪流の鷹匠たちが宮内省式部職に所属した関係上、同省は鷹書類の蒐集も積極的に行っていた。そのため、現存する諏訪流の鷹書類のうち、主要なものの多くは宮内庁書陵部に所蔵されている。このことから、今後は本年度に引き続き、より網羅的に宮内庁書陵部蔵の鷹書類について調査・蒐集を進めてゆくことにする。と同時に、鷹書研究会の例会において、蒐集した諏訪流のテキストの輪読を行い、その内容の具体的な検証も進めてゆく。 ただ、本年度、鷹書研究会の例会で宮内庁書陵部蔵の諏訪流の鷹書(『啓蒙集』『才覚之巻』『鷹狩記 根津流』)を輪読する予定であったが、例年に比べて例会開催の回数が少なかったため、若干、その作業が滞った。同じく韓国国立中央図書館にて『鷹鶻方』諸本の調査を実施する予定であったが、本年度はメンバーの予定が合わなかったため実現できなかった。 以上のような当該研究の予定において、もっとも性急に解決すべき課題は、その活動基盤となっている鷹書研究会の例会を活性化することである。上記のように、本年度は例会開催の回数が少なかった。その要因として、研究会の開催地に関する問題点があげられる。すなわち、これまで当研究会は、当該研究の研究代表者である中本大の本務校(立命館大学)が立地する京都で開催していた。が、本年度から研究分担者の二本松泰子が長野県短期大学に赴任して京都を離れたため、中本大以外の研究会メンバーは全員、京都以外の遠方地在住となった。その結果、会員全員が一堂に会することが難しくなり、結果、例会の回数が減少するに至った。今後、このような課題をクリアするために、研究会の開催については、開催地域を京都以外の複数の場所を視野に入れ、研究会会員が等しく参加しやすい環境を整えてゆくことで対応してゆくことにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度も引き続き鷹書類の蒐集(主に宮内庁書陵部所蔵のテキストのマイクロフィルム)に研究費を使用する予定。 さらに、次年度は鷹書研究会の例会開催の回数を増やしてゆくことから、遠方在住の研究会会員が参加するための旅費を本年度より増額して使用する予定。同じく同研究会恒例の放鷹文化講演会(第9回)を福島(予定)で開催するための人件費、講師謝礼、印刷費、会場費にも使用する予定。 また、韓国所在の鷹書類調査のための海外(韓国)旅費にも使用する予定。
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