研究課題/領域番号 |
24520248
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
三浦 俊介 立命館大学, 理工学部, 非常勤講師 (70599323)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 神社 / 貴船神社 / 貴船の本地 / 丑の刻参り / 縁結び / 神祇歌 / 梁塵秘抄 / 六字経法 |
研究概要 |
平成24年度の研究成果は(A)単著『神話文学の展開』における論考4点、(B)史料翻刻1点、計5点である。 (A)『神話文学の展開』(思文閣出版、平成25年8月刊行予定)の論考 ①第I部第二章「神社神話の遡源」では、貴船神社と稲荷社との関連を述べ、神社秘蔵『黄舩社人舌氏秘書』所収の「黄船遡源神話」が『先代旧事本紀大成経』と関連していることを指摘し、さらに白髭神社の祭神の遡源神話が先行している可能性に言及した。②第I部第三章「神社神話の降臨」では、『黄舩社人舌氏秘書』や國學院大學図書館蔵『木舩谷者所持記』を引用して、貴船山中の鏡岩に降臨してきたと信じられている貴船神を奉祭していた「舌」一族の先祖が鬼や牛鬼であったという伝承について紹介した。③第I部第四章「神々の尻尾」では、貴船神社末社の黒尾社の「尾」は狐の尻尾だが、山尾社・川尾社の「尾」は「神霊」の意味であるということを検証した。④第II部第六章「中世神話『貴船の本地』と貴船神社」では、(a)中世にはまだ中宮が整備されておらず、縁結びの機能を奥宮の出雲系統の神々が担っていたが、やがて現在の中宮結社の山神イワナガヒメ祭祀が作られ、その機能が委譲されたこと、(b)慶応本『貴船の本地』に見える「八臂弁才天」が本社の主祭神の本地仏であること、(c)「客人神」が貴船神社奥宮のスサノヲである可能性があることなどを考察した。 (B)翻刻「國學院大学藏『木舩谷者所持記』」『立命館文学』第六三〇号(二〇一三年)。本史料は、一九一四年に一度紹介されて以来、行方不明になっていた史料で、約百年ぶりに発見した。この史料は江戸後期に書かれたもので、京都の貴船神社に関する史料である。江戸時代の貴船神社の建物の位置や大きさ、貴船神社を詠んだ和歌、伝承されていた貴重な神話、神社の歴史などが詳しく記されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
貴船神社・上賀茂別雷神社・日吉大社など、京滋の神社にまつわる神話の研究と、中世神話『貴船の本地』の注釈的研究を主とする単著『神話文学の展開』を執筆したので、予想以上に貴船神社の歴史や本質についての考察が深まった。國學院大學が所蔵している座田家旧藏文書の存在に気付き、科研費を使って多くの史料を入手、閲覧できたのが有り難かった。 賀茂別雷神社や国会図書館蔵文書などが所蔵している史料が多数存する。単著執筆を通じて調査研究すべき方向性が定まってきたので、必要なものから閲覧していきたい。 「貴船神社の文学と歴史」に関する調査・研究は、おおむね順調に進展していると断言できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の柱は以下の三つである。 (A)貴船神社研究のデータベースと言える「貴船神社史料集」の編纂が必要である。『神道大系』に貴船神社関連の史料は少なく、北野天満宮や伏見稲荷大社のような史料集が編纂されたこともない。資料の収集から始めたい。「境内図」も数種類知られている。 (B)史料集を用いて「貴船神社年表」を作表する。 (C)各論:①和泉式部関連の和歌説話、②貴船神社関連和歌、③『梁塵秘抄』の歌謡、④夜参・謡曲「鉄輪」・丑の刻参り、⑤『貴船の本地』の成立。⑥災害から復旧復興した貴船神社、⑦二十二社制・三十番神、⑧丑日講式、⑨六字経法、⑩稲荷社・飯綱信仰との関連、など。
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次年度の研究費の使用計画 |
現在計画している主な研究費の使用は以下の三種類である。 (A)『新編国歌大観DVD-ROM版』角川学芸出版、294,000円(購入済み)。貴船神社に関連する和歌の考察のためには神祇歌の総合的研究が必要である。 (B)『賀茂別雷神社座田家文書 35ミリフィルム』(雄松堂、470,400円)。本資料は高額であるが、賀茂別雷神社中心に、貴船神社関連の史料も多く含んでいるので非常に重要である。 (C)本年度後半は積極的に賀茂別雷神社に関連文書の複写依頼を出すつもりである。 その他、古文献・洋装本・論文などの複写依頼に使用する予定である。
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