研究課題/領域番号 |
24520252
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
森田 雅也 関西学院大学, 文学部, 教授 (10239668)
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キーワード | 西鶴 / 談林俳諧 / 大坂 / 諸国話 / 上方文学 / 地方 / 文化圏 / 交流 |
研究概要 |
研究課題「地方談林俳諧文化圏の発展と消長~西鶴の諸国話的方法との関係から~」の研究遂行のため、今年度はまず「江戸時代における松前・函館等北方俳諧文化圏」の資料調査(7.28~8.1)を行った。西鶴の諸国話に何度も登場する北海道「松前」を地元教育委員会の方とともに、郷土資料館等の文献調査をしたが、俳諧文化圏の調査にとどまった。しかし、藩主菩提寺「法幢寺」には談林俳諧の宗匠西山宗因の連歌が残っており、松前藩主との交流の一端を知り得た。文献を求めて函館市立図書館・北海道大学附属図書館北方資料室なども調査したが、江戸時代中期の蕉門俳諧・幕末の俳諧資料を見出したものの談林俳諧は未見であった。8.6~8.7、「高野山文化圏における調査と資料収集」を行った。金剛峯寺、奥の院、高野山霊宝院において俳諧調査を行ったが、生前の芭蕉・西鶴が訪れた俳諧文化圏であることは確認したが、新出資料は得られなかった。8.31~9.1、「但馬談林俳諧文化圏(中心地出石)の基礎調査研究」を行った。豊岡市立出石史料館等で元禄年間、談林俳諧の雄、井原西鶴の弟子西国が「出石藩」を何度も訪れていることから、談林俳諧文化圏は確認したが、新資料は見いだせなかった。9.8、「西鶴忌」を実施し、地元大阪の方々と西鶴の俳諧活動を顕彰した。9.27~28、11.14~17二度にわたり、伊勢、松阪、朝日町、名古屋に行き、俳文学会、日本近世文学会に参加するとともに、「尾張・伊勢談林俳諧文化圏の調査」を行ったが、あまりに調査対象が広く、基礎調査にとどまった。12.20~12.22、以上の調査成果の補足と談林俳諧に関するシンポジウムに参加(俳文学会東京研究例会)し、研究の学術的方向性を確認し、単著「『おくのほそ道』と地方談林俳諧~芭蕉が塗り替えた俳諧勢力文化圏~」(『人文論究』第63巻4号、関学大人文学会、p21~49)として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請の際、研究の目的は「まず、すでに地方談林俳諧文化圏として知られている地域を改めて文献的に精査する。同時に江戸、京都、大坂という三都での都市談林俳諧の実態について明らかにする。特に延宝年間から元禄時代に活躍していた大坂談林俳諧の人々について、新資料を探りたい。地方の談林俳諧文化圏の調査については、大坂談林との交遊のある地域を優先したい。そのためには西鶴浮世草子に登場していることを証左としたいが、北海道松前から鹿児島まで及ぶことになるので、とりわけ、西廻り航路、九州航路、近畿河川圏などの商業ルートとの関わり合いから現地調査を行い、その全体像を明らかにするとともに新資料の発掘に努めたい。」とした。 その目的のもと、研究計画のガイドラインを提出し、昨年度は計画予定のうち、①閲覧複写収集資料の保存、WEB上での公開に向けての準備は、モバイルパソコンなどを購入し、今年度には利用度の高いホームページを作成し、研究成果を随時更新できるように環境を整え、公開を始めつつある。②明石・姫路の調査、③豊中・伊丹の調査は未着手であるが、研究代表者にとって近郊であるため、遠方より始めた。④和歌山⑤出石の調査は今年度実施、⑥福井敦賀周辺の調査は昨年度一部実施している。 今年度以降4年間の計画予定のうち、⑦仙台、⑧山形酒田・尾花沢周辺の調査は来年度5月に予定。⑨松前(函館・松前町)の調査実施。⑩名古屋周辺の調査は今年度実施。⑪長崎・大分日田豆田町の調査は昨年度実施。⑫対馬は未調査。⑬韓国の調査は昨年度実施した。すでに基礎調査の段階、調査済みの地域は北海道から九州に達し、近郊も奈良、和歌山、出石等予定以上に進んでいる。他に別研究費により、計画外の台湾、五島列島、沖縄まで調査をすすめており、現地調査は順調に進展している。しかし、WEB上での公開が一部遅れており、総合的に(2)と自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、今までの研究成果を精査、確認すると共に、新たに江戸時代の地方談林俳諧文化圏の発展と消長の実態を調査するために、その対抗勢力であった貞門、蕉門俳諧の地方文化圏を調査する。具体的には『おくの細道』の芭蕉の旅の足跡をたどり、談林が消滅していった実態を分析する。そのために元禄当時の東北、北陸、滋賀、大垣、名古屋の俳諧文化圏の基礎調査を行う。 その一方で、芭蕉没後、美濃派の蕉風俳諧が席巻する以前の四国・九州の俳諧文化圏、すなわち、談林俳諧の実態を調査し、地方談林俳諧の消長について調査する。 また、散逸し、海外に流失した談林俳諧に関する資料収集のため、台湾、韓国等での調査を行う。 何よりも情報機器環境を整え、今年度までの調査実態とデータを順次ホームページにあげ、公表を急ぐことが課題である。この点については、作業量の問題があるので、アルバイト等を用いて効率的に解決したい。 なお次年度、研究代表者が実行委員長となって、10月に第66回俳文学会全国大会を関西学院大学で開催する際、大学図書館において、「西鶴と談林俳諧の消長(仮題)」と題して、大学所蔵の原本・新出資料を中心に公開展示も行う。その展示期間中、準備期間中にも、「地方談林俳諧文化圏の発展と消長」という研究課題について、公開研究会を開催し、研鑽し、より強力に研究推進することに努めたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定よりも、消耗品の購入価格が安かったため。 消耗品費にあてる。
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