研究課題/領域番号 |
24520252
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
森田 雅也 関西学院大学, 文学部, 教授 (10239668)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 西鶴 / 談林俳諧 / 地方俳諧文化 / 都市俳諧文化 / 浮世草子 / 廻船航路 / 江戸文学 / 文学情報 |
研究実績の概要 |
西鶴浮世草子の研究と近世文学における地方談林俳諧、俳諧文化圏の調査研究及び、その一部成果公表に取り組んだ。①江戸時代の浮世草子研究により『浮世草子事典』(笠間書院)に8項目執筆。平成28年度中に刊行される。西鶴諸国話の方法に関係する「諸国敵討」などに言及している。②大垣という俳諧文化圏について研究成果を「芭蕉、木因、そして西鶴」(6.14 於大垣「奥の細道むすびの地記念館」)として講演。内容詳細は科研用森田ホームページで公開予定。また、その補完として「『奥の細道』と元禄文化」(10.15 於神戸婦人大学)と題して講演を行った。③江戸と大坂の俳諧文化圏を結んだ談林俳諧師池西言水『愛宕山連句』について研究。本刻とともに京都談林俳諧の位置づけについて『日本文芸研究』第67巻2号(関学大日本文学会)を投稿した。ただし、同号は事情により第68巻1号と合併されたため平成28年度中に刊行される。④地方談林俳諧文化圏と西鶴大矢数の関係について論じた「西鶴の海と舟の原風景~『西鶴大矢数』にみる地方談林文化圏の存在~」を脱稿。平成28年度中に『西鶴とことばの魔術師』(勉誠出版)に所収され刊行される。⑤西鶴忌を主催(9.13於西鶴菩提寺大阪誓願寺)して、西鶴についての講演会を開催し、研究会を開催した。また第41回西鶴研究会(8.27於青学大)42西鶴研究会(平28.3.24於青学大)に参加した。⑥地方談林俳諧圏研究のため、岐阜・大垣・関ヶ原(5.21~22、6.13~15)、秋田本荘由利市・にかほ市(9.18~20)、福山・今治大三島・尾道因島(平28.3.19~21)で実地調査した。 以上の研究成果をUPするため、今年度末より業者に委託して科研用ホームページを改修(http://saikaku48.jp/)し、一部を公開した。来年度にはさらに汎用度の高いものとして随時UPの予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の骨子は西鶴浮世草子に見える諸国話と大阪談林俳諧の旗手でもあった西鶴と地方談林俳諧、俳諧文化圏の関係を精査するところにある。そのため、文献調査にあたっては江戸時代前期の地方文学文化圏の資料調査が必要となり、ここまで実地調査を中心に研究に取り組んで来た。以下年度ごとの調査進捗状況を上げる。 平成24年度は福井・三国・敦賀、和歌山、日田・福岡、大津、熊本・八代、三重・尾張談林俳諧文化圏の実地資料調査、韓国所蔵俳諧関係文献資料調査を行った。平成25年度は松前・函館、高野山、長崎・五島諸島、但馬出石、尾張・伊勢談林俳諧文化圏の実地資料調査を行った。平成26年度は山形・酒田・尾花沢、対馬、愛媛談林俳諧文化圏の実地資料調査、国立台湾大学を中心とした台湾所蔵俳諧関係和本調査を実施した。また、関西学院大学図書館展示「西鶴と談林俳諧」を監修した。平成27年度は岐阜・大垣・関ヶ原、福山・今治大三島・尾道因島、象潟周辺談林俳諧文化圏の実地資料調査を行った。これらの研究は各年度の研究業績として報告しているように単著論文、共著著作、研究発表、講演等を通し公開され、順調に成果をあげている。 しかし、初年度よりそれら研究成果をWEB上で公開するとしながら技術的な面からUPすることが遅れ、それを毎年度の課題としていた。その点について改善すべく、昨年度末より全面業者委託し、掲載許可の処理が終わった成果物から随時公開に向けての準備を整えているので解決を見ている。 それならば、当初の計画以上に進展していると自己評価すべきであるが、早い年度に予定していた東北談林文化圏の実地調査をかかる大震災関連の影響のため先送りしてきた。すでに談林俳諧と『奥の細道』の時期におけるこの地方の俳諧文化圏との関係は論文にしたが、特に福島県の実地調査は欠かせず、急ぎ実施したい。その点が進捗状況を満点と評価できない理由である。
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今後の研究の推進方策 |
進捗状況でも掲げたように、本研究の骨子は西鶴浮世草子に見える諸国話と大坂談林俳諧の旗手でもあった西鶴と地方談林俳諧、俳諧文化圏の関係を精査するところにある。ところが西鶴の師であり談林俳諧の創始者西山宗因の出身地である熊本県「八代」、西鶴の俳諧の弟子であり、当時の九州俳壇の指導的立場にあった西国の出身地大分県「日田」が近時激震に見舞われた。すでに実地調査を終え、地元教育委員会や寺社関係者の協力をとりつけ、文献調査を残すのみとなっていたが、調査の目処が現段階において立たなくなった。当面、東京など他府県の公的機関などを利用して可能な限りの調査を行うしかないが、研究計画の変更にまで踏み切るには時期尚早と考えている。そのため、まず、実地調査は当初の研究計画にあった未着手の近畿地方、東海地方などの残りの調査地域から進め、東北俳諧文化圏、九州文化圏と調査を進めたい。 実地調査と同時に進めるべきは初年度よりの研究成果のWEB上での公開である。単なる論文の集合体ではなく、関連づけやリンク等の張り方の検討も必要で、専門業者や情報学関係の研究者の協力を得て、汎用度の高いホームページの制作を目指したい。 当然ながら、まだ論文化していない成果などを学術論文集に掲載し、学術的検証を行うのは言うまでもない。すでに執筆中の論文も含め、三点の論文発表を予定している。その他、本研究に関わる依頼発表、講演等についても積極的に成果公表の機会として役立てていきたい。 このような研究成果の公開とともに、俳諧全般に関わる滑稽性を社会に広く啓蒙するため、一般書の出版を計画し、昨年度3月より着手している。出版社は関西学院大学出版会、表題も含め、詳細は検討中である。 以上、本研究は研究計画最終年度のため、できる限りすべて早めの実施を心がけたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
注文していた研究書が年度内に届かなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度の物品費と合わせて消耗図書代として使用したい。
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