研究課題/領域番号 |
24520258
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研究機関 | 石川工業高等専門学校 |
研究代表者 |
高島 要 石川工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (80124022)
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キーワード | 近世文学 / 日本漢詩 / 近世漢詩 / 日本漢詩集 / 漢詩総集 / 煕朝詩薈 / 歴朝詩纂 / 友野霞舟 |
研究概要 |
1,『煕朝詩薈』の伝本の研究について、今年度は、国会図書館所蔵の別本について、調査した。国会図書館蔵鶚軒文庫本と同じく、基本伝本である旧昌平坂学問所蔵の伝本の転写本であろうと考えられる。 2,『煕朝詩薈』は、総集を典拠とするもの、また各別集を典拠とするものが混在する。『煕朝詩薈』の典拠詩集について、『煕朝詩薈』冒頭三巻について詳細に分析した。総集としては、松平頼寛編『歴朝詩纂後編』のほか『楽ハン集』『嚮風草二編』『徳山雑吟』から採択している。別集としては『壷山集』『猗蘭臺集』である。これらと『煕朝詩薈』冒頭三巻と対照させ、採択状況を具体的に明らかにした。即ち『煕朝詩薈』巻三までは『歴朝詩纂後編』巻六から巻十三までに、そのほとんどを依拠して編纂されている。『煕朝詩薈』巻三までは諸大名の詩を収録するものであり、その材料は主に『歴朝詩纂後編』だったのである。 3,冒頭三巻以下の各巻について、各別集を典拠とするものについて、巻の順に従って、典拠詩集を調査し、『煕朝詩薈』巻五十二までについて、別集の典拠詩集の調査を行った。相当数の典拠詩集が明らかになり、そのほとんどが国立公文書館内閣文庫蔵の旧昌平坂学問所蔵の本であることが判明。しかもこれらの諸伝本には、典拠となった詩集という意味を超えて、『煕朝詩薈』編纂に直接に使用された本そのものであると思われる痕跡も残されていることが明らかになった。これは『煕朝詩薈』編纂の場と意義を考察する上で、重要な意義をもつと考えられる。 4,『煕朝詩薈』の巻三十までについて、作者・詩題・作品巻頭詩句の電子化テキストの素稿を作成した。作者・詩題・作品のデータベース作成の基礎となるものである。各作品のデジタル画像データと連動させることにより作品の検索機能を確立するための、基礎的データとして用いるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、『煕朝詩薈』の基礎的研究のうち、前年度に引き続き『煕朝詩薈』の伝本に関わる基礎的研究と、『煕朝詩薈』に関連する漢詩集等に関わる研究との二つの面から調査研究を行った。 前者については、(1)前年度に引き続き『煕朝詩薈』の諸伝本を所在を確認し調査し、新たに国会図書館蔵本の別本を調査し、これも内閣文庫蔵本の転写本であると推定した。(2)『煕朝詩薈』の基本伝本である国立公文書館内閣文庫蔵本の完成した電子画像ファイルの検索の便宜のために、巻冊対照表を作成した。(3)作品検索データベースの作成を想定して、詩人名・詩題・作品冒頭一聯について、前年度の電子テキスト化を承けて、およそ30巻まで作成した。 後者については、前年度に引き続き『煕朝詩薈』正編の典拠となった漢詩集の資料収集を継続して行ない、(4)総集については、『煕朝詩薈』巻三までについて詳細な分析を行った。(5)別集については『煕朝詩薈』巻五十二までについて典拠詩集を確認した。(6)総集・別集ともに実際に編纂に用いられた漢詩集資料の相当数が、旧昌平坂学問所蔵(現内閣文庫蔵)の諸本であることを確認した。 以上のような基礎的な研究が本年度計画のものであるが、その進行途上において、(7)冒頭三巻の編纂には、諸大名に対する配慮がみられること、(8)地方の藩の詩人で編纂された総集が用いられていること、等の文学史的な研究も併せて展開された。以上、年度計画に照らして、(1)(2)(3)については、ほぼ計画に沿って実施。(4)(5)(6)については、計画の目標の巻数には達していないが、(6)に述べるように、直接の典拠詩集の在処が想定されたことにより、今後の調査の方向が見えた意義は大きい。(7)(8)については、基礎的研究をふまえて、既に文学史的研究に及んだもの。 以上のことから計画に照らして、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は当初計画で、『煕朝詩薈』の諸伝本と漢詩作品に関わる基礎的研究(方法甲)。『煕朝詩薈』の各収録詩人の小伝・評伝についての基礎的研究(方法乙)。詩人の面からの文学史考察、『煕朝詩薈』の編纂意義、近世期における漢詩総集編纂の意義の考察等、総じて文学史的分野の研究(方法丙)という、3つの方法を核として実施し、はじめ3年度は基礎的研究(主に方法甲・乙)を中心に進め、後の2年度は文学史的研究(主に方法丙)を中心に進めるとしてきた。その大要について変わりはない。加えて25年度においては、基礎的研究と文学史的研究と連動して展開すること、また具体的な典拠詩集の特定について、編者が編纂にあたって具体的に使用したテキストは編者周辺に存在することを展望しその結果として、国立公文書館内閣文庫所蔵の諸本を特定するという成果を得た。 これを承けて今後、次の点に留意して、研究を推進し加速させたい。 1,『煕朝詩薈』の典拠詩集については、編者の周辺に直接にあったと思われる内閣文庫旧昌平坂学問所蔵本の総集・別集を、特に念頭において進めることで研究を加速させことができる。 2,作品検索データベースの作成を想定しての、詩人名・詩題・作品冒頭一聯についての電子テキストの作成を加速させる。 3,『煕朝詩薈』の各種伝本の所在調査を進めることで、伝本調査の範囲を拡大させる。
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次年度の研究費の使用計画 |
年度計画の「作品検索データベースの作成を想定しての、詩人名・詩題・作品冒頭一聯についての電子テキスト化」について、作業の委託業務の前段階として、研究者自身において実施する作業が主となり、業務の委託に至らなかったこと。また「電子化テキスト作成支援ツールの導入」は、現段階の作業としては既存のツールで作成が可能であったこと。また調査旅行が日程等の関係で一部実施できなかったこと。 以上の事由による。 当初計画に加えて、以下の点を補充して計画する。 年度実施計画のうちの、「作品検索データベースの作成を想定しての、詩人名・詩題・作品冒頭一聯についての電子テキスト化」については、一部を次年度においても、その作業や研究を次年度に継続的に実施する。また「電子化テキスト作成支援ツール」は新型式のものの導入を検討する。また「総集・別集についての典拠詩集の調査」研究の一部を、次年度計画に継続し補充して実施する。
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