研究課題/領域番号 |
24520263
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研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
吉田 直希 成城大学, 文芸学部, 教授 (90261396)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 18世紀 / イギリス / 公共圏 / 文化 / 科学 / 経済 / ジェンダー / 快楽 |
研究実績の概要 |
ハーバーマスの公共圏概念では、女性がこの文化圏にどのように参加してきたのかが明確になっていない。文化の商品化について考える際にも、消費者としての女性の役割、そして消費の対象としての女性の役割を見逃すことはできないだろう。当該年度の研究では、女性の欲望、想像力、快楽、美徳をめぐる様々な言説を対象に、公共圏における近代的主体の歴史性について、ジェンダーの観点から検討した。「展示され、消費されることを欲望する女性」を作り出す、と同時に制御することを目指す18世紀公共圏文化の複雑な力関係を解明するため、ジョン・ゲイの代表的作品である『乞食オペラ』を精査した。その結果、『乞食オペラ』は18世紀の演劇界で空前の大ヒットを飛ばした作品であったが、その後の上演で、異性装が取り入れられたことがわかった。『乞食オペラ』の諷刺が、当時のウォルポール政権に対する時事的、政治諷刺であることは間違いないが、それだけではなく、ジェンダー諷刺でもあったことを考えると、その後の人気はこの隠れたジェンダーの問題が徐々に「物質性/重要性」(materiality)を帯びてきたためであると考えられる。その重要性は、18世紀中庸以降、小説の主たるテーマを見れば明らかである。また、ジェンダーの両義性を解釈する観客の視点は、読者の解釈にも影響を与え、作品自体を批判的に読むことを要求するようになる。『乞食オペラ』自体を批判する小説の可能性を今後、様々な小説作品の読解を通して行う必要が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
公共圏における近代的主体の歴史性について、ジェンダーの観点からこれまでの研究成果をまとめ、ASECSにおいて発表する予定であったが、日程の調整がつかず、報告を延期せざるをえなくなってしまったため、やや遅れていると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
学会発表、研究会の開催後、3年間の研究成果を総括し、「18 世紀イギリスにおける公共圏文化の歴史的意義」について新たな著作に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
公共圏における近代的主体の歴史性について、ジェンダーの観点からこれまでの研究成果をまとめ、ASECSにおいて発表する予定であったが、日程の調整がつかず、報告を延期せざるをえなくなってしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
研究会の開催ののち、研究成果を取りまとめ発表する。
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