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2013 年度 実施状況報告書

湖水地方の自然保護でワーズワスが果たした役割の再検討

研究課題

研究課題/領域番号 24520267
研究機関山形大学

研究代表者

小田 友弥  山形大学, 教育文化学部, 名誉教授 (20085468)

キーワード湖水地方 / 自然破壊 / 近代化 / 旅行案内書 / 地方史書
研究概要

研究目的の達成のために、前年度に引き続き1750~1850年頃に出版された旅行記や案内書、歴史書、地誌書などから窺われる湖水地方の自然保護意識について調査を進めた。その結果、保護意識には次のような3段階があることが浮かび上がってきた。第1段階はT. クーパーやJ. ドルトンの1750年代前半の詩に見られる、ダーウェント湖周辺の木の伐採に対する抗議である。第2段階はイングリッシュやポックリントンによる、湖水地方とは異質の景物の導入で、これは1770年代から始まる。第3段階は1830年代からの、鉄道などの導入である。しかしながら、例えばT. ウェストの『湖水地方旅行案内』では著者がイングリッシュを批判しているのに、編集者が擁護していることに見られるように、第1,2段階では保護意識が散発的で大きなうねりとはならなかった。なぜであろうか。
自然保護意識が明確化する際には、自然破壊の主体に対する意識も形がはっきりしてくる。イギリスの場合、それは商工業や農業における近代化である。湖水地方にも近代化の波は1750年代から訪れ始め、道路の改良による外界との接触が古来の美徳を破壊すると意識し始めていた。しかしながら自然破壊と近代化の相克は十分に認識されないままに19世紀に至ってしまった。豊かさの源泉である近代化が自然に及ぼす影響は限定的であったのもその一因ではあろうが。
これがワーズワスが湖水地方に帰還した1799年の状況であった。だが彼が他の人々と違っていたのは、自然と近代化は湖水地方では両立しないと考えたことである。しかもその考え方にヴィクトリア朝の人々が共鳴することによって、ワーズワスを自然保護の原点とする見方が定着した。したがって、今後考察すべきは、何が第1,2段階と第3段階を分けたのかという点であろう。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

湖水地方やその他の地域に関する、広範な年代の古書が順調に入手できているので、時代や地域の違いが生む、自然に寄せる思いの変遷を相当把握できた。ただ、最近のグーグルによる古書の電子版の無料公開などにより、古書の収集方法に「研究計画調書」とずれている面がある。

今後の研究の推進方策

(1)「研究実績の概要」で述べた第1,2段階の代表的な提唱者の思考内容を彼らの著書に従って鮮明にする。
(2)ワーズワスやラスキンなど第3段階の考え方を把握する。
(3)第1,2段階と第3段階の考え方を比較しながら、なぜ最初の段階の考えが第3段階に順調に継承されなかったのかを考察する。
(4)最近ワーズワスとエコクリティシズムの関わりや湖水地方の自然保護の現状などを扱った有力な研究所が発刊されているので、それらの知見を十分に把握する。
(5)以上をまとめてワーズワスが湖水地方の自然保護で本当に果たした役割について結論を得る。

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公開日: 2015-05-28  

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