研究課題/領域番号 |
24520270
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
鷲津 浩子 筑波大学, 人文社会系, 教授 (30149372)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 知識の枠組み / 知識史 / 法医学 / 毒薬(学) / ナサニエル・ホーソン / 庭園 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、課題「ライフ」から課題「ロー(law)」への移行措置として、平成25年度に続いて法医学をとりあげた。19世紀前半は法医学成立の時期とも重なり、この時代を語るとき、法医学を必要とした背景とそれを可能にした土壌を考察に含めることは重要である。また、19世紀法医学の課題がセクシュアリティ、インサニティ、トクシコロジーであったことから、平成25年度の研究の中心がセクシュアリティの問題であったのに対し、平成26年度はトクシコロジー/毒薬(学)の問題に焦点を当てた。 この時代に毒薬(学)に注目が集まった理由には、ふたつある。そのひとつは、都市型犯罪の増加である。それまでの小さなコミュニティでの積年の恨みを晴らす殺人の場合には、動機も犯人も比較的わかりやすいものであったが、産業革命とそれに付随する都市の発展にしたがって、犯罪は偶発的で他人の財産(生命も含む)を侵害するものとなった。理由のふたつめとしては、前世紀から飛躍的に発展した化学が、鑑識の仕事を可能にしたことである。その結果、それまで病死と思われていたものが実は毒物による殺人であることが分かるようになった(ただし、毒薬の特定には至っていない)。 このような時代背景のなかで、たとえばナサニエル・ホーソンの「ラパッチーニの娘」に登場する毒草の庭園にはどんな意味があるのだろうか。また、その中でも特別に言及されている「紫の花」とは何なのだろうか。これまで寓話的道徳的な側面から論じられていた庭園を、同時代の毒薬学のコンテクストで読み直す試みは、アメリカ合衆国ミネアポリスで開催された国際学会で口頭発表され、高い評価を受けた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
法医学関係(毒薬)のリサーチに関しては、満足のいくものだった。 口頭発表をしただけで刊行されていない論文が何編かあるが、これは単行本刊行に向けて準備中のためで、研究自体の遅延はない。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度からは一方で法医学の第三分野インサニティ関係のリサーチを始めるとともに、他方では「ライフ」や「ロー」を可能にする環境についても考察を進めたい。
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