研究課題/領域番号 |
24520272
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
宮本 陽一郎 筑波大学, 人文社会系, 教授 (30143340)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | プロパガンダ / 戦争記録画 / 左翼 / ネットワーク |
研究概要 |
「人民戦線」を契機とする左翼文学者・左翼知識人の、グローバルな政治意識のネットワーク、社会主義という知識人の共通言語の果たした役割について、大学院における担当授業「アメリカ文学史研究」および「アメリカ文学演習」において講じるとともに、大学院生との共同研究を推進した。 同時に、オックスフォード大学出版局から近日刊行されるプロパガンダをめぐる論文アンソロジーへの寄稿を依頼され、第二次世界大戦期の日本の戦争絵画の製作と戦争終結直後のアメリカの戦闘美術家(Combat Artists)による収集活動をめぐる論文を執筆した。このなかで「プロパガンダ」という概念が、人民戦線期から冷戦の開始に至るあいだ、それ以降とは異なるトランスナショナルな文脈で理解されていたことを解明した。 この論文の執筆のため、ワシントンDCのArchives of American Artistsにおいて、Ted GilienとJoseph Vogelのアーカイヴを調査した。この二人の画家は人民戦線に参加した左翼美術家であり、戦時期にはアメリカ軍の戦闘美術家として「プロパガンダ」に協力し、戦争終結とともに日本で日本の戦争記録画の収集作業に重要な役割を果たしている。ここには冷戦の開始とともに抹消される美術家のネットワークが存在した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大学におけるグローバル化推進事業(G30+)のために、膨大な時間を投入し、予定していた海外調査期間を大幅に短縮せざるをえなかった。また予定していた調査の一部は次年度に継続せざるをえない。 しかし大学院生との共同研究体制は堅固に構築することができ、執筆した論文が海外での刊行の機会を与えられたことは、大きな成果と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
「1946年」をテーマとする論文を執筆する研究を行う。フランス、中国、社会主義圏からの大学院留学生を研究協力者として、各国におけるアメリカ文学研究の生成過程を辿るとともに、それを促した文化的ネットワークを解明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
大学公務のため、予定していた調査期間を確保できず、また耐震工事に伴う研究室移転のため予定していた資料購入を次年度に延期したため、残額が生じた。これについては次年度の「1946年」をテーマとする研究のなかで合わせて使用する。 とりわけ1946年のアメリカの左翼美術家たちの活動についての前年度調査は、まだ展開の余地を残しているので、ニューヨークのメトロポリタン美術館およびワシントンの公文書館における調査、および関連資料の収集・購入を継続的に実施する。
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