研究課題/領域番号 |
24520273
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐藤 光 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (80296011)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ウィリアム・ブレイク / 柳宗悦 / 比較文学 / 比較文化 |
研究概要 |
柳が『ヰリアム・ブレーク』(1914)を出版する以前に、『白樺』に発表した美術関連の論文の特徴を洗い出した。主な論文として、「オーブレー・ビアーズレに就て」「宗教家としてのロダン」「ルノアーと其の一派」「革命の画家」「アンリ・マティスに就て」が挙げられる。「革命の画家」の下敷きとなったのが、Lewis Hind, The Post Impressionists (1911)であることは既に指摘されているので、両者の類似点と相違点を考察した。初期柳の美術評論とブレイク研究には、大逆事件以後の思想統制に対する柳の態度がにじみ出ていることを明らかにした。また、日本民芸館所蔵の柳の旧蔵書を調査した。この調査は平成25年度も継続する。 また、柳の著書『ヰリアム・ブレーク』の成立過程を、柳が『白樺』に掲載した「哲學に於けるテムペラメントに就て」(1913)とあわせて考えながら跡付けた。 これまで柳宗悦によるウィリアム・ブレイク研究の特色として、欲望の肯定、想像力の重視、無律法主義的な宗教観、個人の内発的な力に対する信頼などのブレイク思想を、柳が的確に理解したという点が指摘されてきた。しかし、柳の著書『ヰリアム・ブレーク』(洛陽堂、1914)巻末の「主要參考書」一覧を一瞥するならば、これだけの書誌情報をそろえるぐらいに勉強家であった柳にとって、ブレイクを的確に理解することはそれほど難しくはなかっただろうと推測される。柳が好んで用いた用語の一つである「テムペラメント」を手掛かりに、欧米のブレイク研究だけでなくウィリアム・ジェイムズの影響を受けながら柳のブレイク研究が進展したことを、『ヰリアム・ブレーク』の特色の一端として明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究成果として、以下の3本の論文を発表した。 ・「柳宗悦よりジョン・サンプソンに宛てた『全集』未収録の書簡について―明治・大正期のウィリアム・ブレイク書誌学者たち(補遺)―」、『日本ジョンソン協会年報』第36号(日本ジョンソン協会、2012)、5-9頁 ・「柳宗悦に於ける「テムペラメント」―『ヰリアム・ブレーク』(一九一四)の基底音」、『比較文学』第55巻(日本比較文学会、2013)、22-35頁 ・「柳宗悦『ヰリアム・ブレーク』-反抗の精神と個性の尊重」、『イギリス・ロマン派研究』第37号(イギリス・ロマン派学会、2013)、109-114頁 順調に研究が進展していることの証左である。
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今後の研究の推進方策 |
ロセッティ兄弟とブレイクとの関わり、19世紀末から20世紀初頭のブレイク研究の実態を解明することが今後の課題である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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