研究課題
基盤研究(C)
2012年度は本研究のテーマを扱った先行研究にあたり、理論的な基盤を形成する作業を進めた。またその一端を論文や口頭発表の形で公にした。Jeunesse: Young People, Texts, Cultures誌に掲載の論文は、主として2000年代のイギリス小説を題材とし、その登場人物たちの反規範的な身体加工表象が、ジェンダーのみならず人間/動物間の境界さえ解体するものであり、またそうした二項対立的な境界自体、文化的虚構にほかならないことを暴いていることを読み取った。またそれを登場人物の主体およびテクストの混交性と重ね合わせて論じたが、その際、「ポストヒューマン」の議論において、同様の境界形象として取り上げられることも多い「サイボーグ」等の概念を援用した。そのうえでこの小説が、美容外科手術の主題を通じ、女性美の文化規範を問題化してきた従来の作品群に対し、オルタナティヴな議論の枠組を提供するものであると意味づけた。同様の視点から、"Contemporary Women's Writing: (Wo)man and the Body"をメインテーマとして開催されたContemporary Women's Writing Associationの世界大会では、日本の女性作家による2010年代の小説などを論じた。以上の研究成果を2013年度以降の研究に接続し、本研究のテーマについての体系的な論考として提出したいと考える。
2: おおむね順調に進展している
本研究の初年度にあって、一定の成果をおさめることができたと考える。
今年度に得られた研究成果を、次年度以降の議論に接続し、このテーマについての体系的な論考として提出したい。
論文執筆に必要となる資料収集のための費用等。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)
Jeunesse: Young People, Texts, Cultures
巻: Volume 4, Issue 2 ページ: 67-85