研究課題/領域番号 |
24520282
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
森岡 裕一 大阪大学, 文学研究科, 教授 (20135635)
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キーワード | アメリカ合衆国 / 禁酒小説 / 家庭小説 / 離婚モチーフ / ジェンダーバランス |
研究概要 |
今期も海外でのフィールドワークを中心に、積極的に資料収集につとめた。夏期にはアメリカ中西部各地のワイン製造所、ビール工場を訪れ、アメリカにおける酒製造、販売の歴史に関する知見を深めた。とりわけカリフォルニアとならぶミズーリワインの歴史について学ぶ機会があったことは有益である。 冬季はニューヨークでの資料調査で、多数の禁酒小説資料を閲覧、コピーすることができた。また、今年の春には、イギリス・ロンドンへ出張し、大英図書館などで英国禁酒運動に関する資料を多数調査できたこと、および、ロンドンのパブ関係者への聞き取り調査を実施できたことは今後の研究にとって意義深い。 その間、蓄積されている資料の精査、分析を持続して行っている。その成果の一端は、 新著『アメリカ文化のサプリメントー多面国家のイメージと現実』の第九章「酔いどれのアメリカー大量飲酒と禁酒運動」に反映されている。また、投稿済み論文「家庭の呪縛ー禁酒小説における「離婚」の不在」では、禁酒小説研究過程で明らかになった家庭内のジェンダーバランスの問題を、当時の社会背景を通して考察したものであり、禁酒小説研究のさらなる展開を示唆した論文となっているものと自負している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究対象の禁酒小説はテクスト入手が困難で、現地の図書館等で直接資料にあたるほかない。資料はコピーをとるか、コピー不可の場合は筆写するしかなく、たびたびの出張を通して収集の努力を続けている。また、飲酒一般に関するさまざまな知見を現地の酒造販売業者らに直接聞くことができたことも貴重な経験となった。その意味で多忙な日程の中で海外出張の機会を確保できたことは研究の進展のうえで有意義だと考えている。 資料の分析もほぼ予定通り進んでおり、既述の本、論文にその成果の一部が発表できたことは大きい。これまでの成果を禁酒小説に特化した本の形でまとめることが近い将来できそうである。
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今後の研究の推進方策 |
禁酒小説研究に関しては量的アプローチが有効であり、対象資料は多ければ多いほど研究の精度は高くなる。したがって可能な限り資料収集を継続することが必要である。 同時に、収集した資料の分析のまとめに入る段階にかかっており、とくにジェンダーの視点から、禁酒小説における「男らしさ(manliness)」、そして、それとも関係する飲酒・禁酒における自由意思の主題を考究したい。それをもって、研究に一応のまとまりをつけることができるものと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度中に行った海外出張について、そのうちの一回分は、英米文学専門分野内の取り決めにより運営費交付金で賄われたため、一部使用額が次年度使用に回った。 また、海外からの研究書購入については手続きの簡便さゆえに私費にて購入した分が多く、その分も次年度使用に回っている。 今年度は、機器・文具等の備品への出費が少なかったことも要因の一つである。 資料整理と文献目録作成にアルバイトを雇用するうえで、人件費を見込む必要がある。そのための機器・文具のための費用も必要となる。 また、海外出張による資料収集は引き続き行う予定であり、それらに要する費用にも予算を充当する予定である。
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