大英図書館(British Library)で、T.C.Phillips婦人の自伝(An Apology for the Conduct of T.C.Phillips)の初版や異本の最終的調査を行った。文章の改訂の中で、そもそもは夫との離婚訴訟の証拠書類としてスキャンダル暴露的色彩が強かった初版が、より文学的に洗練されたものになっていった過程について詳細な事実を確かめることができた。成果については、『言葉のしんそう(深層・真相)』という書物に掲載した論文「ジャマイカと女たちーーサリー、コン、バーサ」として発表することができた。また、成果を国際的に発信するために、8月のバックネル大学出張の際、Greg Clingham教授のゼミにおいて講演を行い、貴重な議論を交わすことができた。 スキャンダラス・メモアリストたちと地震、特にジャマイカ地震とリスボン地震表象とが密接な関係にあることが判明し、これが後のシャーロット・ブロンテの『ジェイン・エア』に影響を与えていることは重要な発見であった。リスボンの国会図書館に出張し、リスボン地震の実態を調査し、文献によってイギリス文学への影響、特にいフィリップス婦人らへの影響を確認できた。併せてリスボンで客死しているヘンリー・フィールディングのリスボンでの足跡をたどることができ、研究者が等閑視しがちなポルトガルという国とイギリス文学が実は大きな関係を持つことが明らかになった。
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