研究課題/領域番号 |
24520284
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
貴志 雅之 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 教授 (30195226)
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キーワード | アメリカ演劇 / 政治学 / ユージーン・オニール / テネシー・ウィリアムズ / オーガスト・ウィルソン / トニー・クシュナー / 亡霊 / 人種 |
研究概要 |
平成 25 年度研究実績は大きく以下の3つに分類される。(1)前年からのユージーン・オニール研究をさらに展開し、19世紀・20世紀初頭の商業主義演劇に対する反逆の劇作家としてオニールを位置づけ、彼の劇作を反逆のドラマトゥルギーとして再考した政治学研究「ユージーン・オニール、反逆の演劇の軌跡 ― 詩人、所有者、憑かれたる者たちの弁証法」を第3回日本アメリカ演劇学会シンポジウム「オニールのアメリカ」(2013年9月29日)で発表。(2)第56回日本アメリカ文学会関西支部大会フォーラム「アメリカ文学と亡霊」(2012年12月)の発表を発展させ、ウィリアムズ最晩年の作品『曇ったもの、澄んだもの』(1981)を中心にしたウィリアムズの政治学研究「テネシー・ウィリアムズ、亡霊のドラマトゥルギー ― 記憶、時間、エクリチュール」を『英米研究』(大阪大学英米学会誌)第38号(2014年3月)に発表。(3)日本アメリカ演劇学会第2回大会シンポジウム(2012年6月)で発表したオーガスト・ウィルソンの「20世紀サイクル」における人種的遺産継承の政治学研究をさらに展開した論考「アフリカ系アメリカ人共同体、人種的遺産継承の政治学 ― 『大洋の宝石』から『ラジオ・ゴルフ』へ」を『アメリカ演劇』第25号(2014年3月)で発表した。 なお、昨年の研究実績報告で2013年秋刊行予定と記載したトニー・クシュナーの『エンジェルズ・イン・アメリカ』に関する災害の政治学研究「天界と人間界、災害を生き抜く政治学 ―トニー・クシュナーの『エンジェルズ・イン・アメリカ』」の掲載共著『災害の物語学』(世界思想社, 総頁数336 [247-271])は出版が遅れ、2014年5月1日刊行となったことを補足しておく。 以上の業績のうち(1)と(2)は当初の平成25年度研究計画のものであり、(3)及びクシュナー研究は次年度以降のものを前倒しにして実施したものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績の概要で記載したように、当初の計画以上に研究は進展している。研究計画では、平成25年度は、第2次世界大戦終結から冷戦期を中心に、アメリカ政府の国内外の政治政策に係る歴史的事件・現象と政治的プロパガンダを、クイア・人種的マイノリティの周縁化を図った冷戦構造下のアメリカの国家権力とイデオロギーの問題と合わせて検証し、支配的政治イデオロギーに対する対抗言説として、アメリカ演劇の政治戦略を検討する計画であった。まず、昨年の実績報告書で掲載確定とした記載した共著『アメリカン・ロード ― 光と陰のネットワーク』(英宝社,2013年11月, 総頁数310)で、冷戦下アメリカの巨大軍産複合体体制をポリティカルなまなざしで検証した論考「帝国化するアメリカ、反逆する他者 ― テネシー・ウィリアムズ、SF、黙示録的政治劇」(5-27)により、本年度研究計画を実行し、同時に本年度研究実績で示した(1)のオニール研究と(2)のウィリアムズ研究もこの研究計画に沿ったものである。当初より研究対象とする劇作家数を絞り、特定の劇作家に焦点化したことで検証・考察の範囲は狭まったが、そのレベルが深まった。加えて、(3)のオーガスト・ウィルソン研究と出版の遅延あったが2014年5月1日発行のクシュナー研究ではすでに研究計画の平成26年度の研究項目を扱っている。 以上から、次年度の研究計画についても前倒しで着手しており、その成果を学会の年次大会および論文と共著で発表している。よって、全体として研究計画の時系列的予定以上の進捗状況であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
上記の「現在までの到達度」が示すように、これまでの進捗状況は良好である。今後は当初研究計画に沿って各年次の研究項目を消化するとともに、時系列的研究計画を柔軟に調整し、国内外の学会と他の研究者との共著執筆状況を見極めつつ、研究計画では別年度の研究項目でも本研究課題全体のなかでの各研究項目間の相互関連性と連続性を重要視し、次年度に発展的に続く当該年度の研究のさらなる推進を図っていきたい。
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