研究課題/領域番号 |
24520285
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
遠田 勝 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (60148484)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 小泉八雲 / 民話 / オリエンタリズム / 怪談 |
研究概要 |
本研究は、ハーンの『怪談』に典型的にみられる、語りの「オリエンタリズム」が、明治日本の欧米知識人に、「輸出向け」の日本の物語を構想させただけでなく、それが翻訳や翻案を通じて逆輸入されることで、近代日本における「伝統的」物語の創出に関与していたことを調査・証明しようとするものである。本年度は、第一段階として、近代日本のさまざまな伝説・民話・物語についての資料収集を行うとともに、その分析成果の一端を、『辺見じゅん「十六人谷」伝説と「雪女」――「人に息を吹きかけ殺す」モチーフと民話の語りにおける伝統の創出(その一)』(神戸大学『近代』一〇七号)に発表すると共に、2012年12月15日〈土〉富山大学において開催されたシンポジウム「小泉八雲の新しい地平 : 最近のラフカディオ・ハーン研究をめぐって」において「富山の『十六人谷』伝説(辺見じゅん)と『雪女』――ハーンと日本の民話」としてハーン研究者ならびに富山の一般聴衆にむけ報告し、幅広い視野から検討した。 その結論として、この伝説が「雪女」ときわめてよく似たプロセスたどって、ローカルからナショナルな「民話」に「出世」していったこと、また、その最終形である、富山出身の作家、辺見じゅんの語る「十六人谷」が、ハーンの「雪女」を下敷きにした、西洋ロマン主義的な翻案であること、そして、この辺見版の伝説が、今では富山の土着の民話の決定版として流布していることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の実施計画どおりに、近代日本におけるさまざまな伝説・民話・物語の文献を収集するとともに、ハーンの『怪談』の原話と再話、あるいはその影響を受けた周辺の民話のなかから、「一六人谷伝説」という富山土着の著名な伝説をとりあげ、そこにハーンのオリエンタリズムによる語りの影響がみられ、西洋の語りが日本の民話、伝説の伝統的語りの創出に関与していたことを論証できた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に引き続いて、近代日本におけるさまざまな伝説・民話・物語のなかから、ハーンの『怪談』などのオリエンタリズム的語りの影響を受けた物語を検証するとともに、対象をさらに拡大して、同様の事例の発見、検証につとめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
引き続きオリエンタリズム的語りに関連する図書の収集(100千円)を行うとともに、現地調査を行い(150千円)、データ整理のためのコンピュータソフトの購入(100千円)、資料整理(人件費、謝金として150千円)を行う。
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