研究課題/領域番号 |
24520285
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
遠田 勝 神戸大学, その他の研究科, 教授 (60148484)
|
キーワード | 民話 / 小泉八雲 / ラフカディオ・ハーン / 辺見じゅん |
研究概要 |
本研究は、ハーンの『怪談』に典型的にみられる、語りの「オリエンタリズム」が、明治日本に滞在した欧米知識人に、「輸出向け」の日本の物語を構想させただけでなく、それが翻訳や翻案を通じて逆輸入されることで、近代日本における「伝統的」物語の創出に関与していたことを調査・証明しようとするものである。本年度は、前年度に引き続き、近代日本のさまざまな伝説・民話・物語についての資料収集を行うとともに、前年度に行った(2012年12月15日)富山大学におけるシンポジウム「小泉八雲の新しい地平 : 最近のラフカディオ・ハーン研究をめぐって」の成果などを取り入れて、『辺見じゅん「十六人谷」伝説と「雪女」 - 「人に息を吹きかけ殺す」モチーフと民話の語りにおける伝統の創出(その二) 』を平成25(2013)年11月、神戸大学近代発行会「近代」、第109号(p1-15)に発表し、前年度発表した(その一)とあわせて、富山土着の伝説とされる「十六人谷」伝説が、「雪女」ときわめてよく似たプロセスたどって、ローカルからナショナルな「民話」に「出世」していったこと、また、その最終形である、富山出身の作家、辺見じゅんの語る「十六谷」が、ハーンの「雪女」を下敷きにした、西洋ロマン主義的な翻案であること、そして、この近代西洋の語りを大幅に取り入れた、辺見版の伝説が、今では富山の民話の決定版として流布していることを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実施計画どおりに、近代日本におけるさまざまな伝説・民話・物語の文献資料を収集するとともに、「一六人谷伝説」という富山の著名な伝説をとりあげ、そこにハーンのオリエンタリズムによる語りの影響がみられ、西洋の語りが日本の民話、伝説の伝統的語りの創出に関与していたことを論証する論文として発表し、また、研究テーマをさらに補完するために、ひとつの事例の発掘し、今年度中に二編の論文として発表する準備が整った。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度に引き続いて、近代日本におけるさまざまな伝説・民話・物語のなかから、ハーンの『怪談』などのオリエンタリズム的語りの影響を受けた物語を発掘し、論文として発表する。
|