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2012 年度 実施状況報告書

戦後イギリス社会におけるBBCサードプログラムのラジオドラマ

研究課題

研究課題/領域番号 24520290
研究種目

基盤研究(C)

研究機関広島大学

研究代表者

川島 健  広島大学, 文学研究科, 准教授 (60409729)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2016-03-31
キーワードイギリス / BBC / ラジオ / 演劇
研究概要

本研究は1950年代から60年代にかけてのイギリスの社会状況を背景に、BBC(The British Broadcasting Corporation)のサードプログラムで制作されたラジオドラマを再評価することを目的にする。本年度はサードプログラムのラジオドラマにおける「周縁」表象に特化して、研究を推進した。4月から、CDやiTunesで購入可能なラジオドラマ音源と出版台本も入手し、音と文字を付き合わせながら分析を開始した。
〔調査〕 9月6日から9月16日にかけてイギリスはロンドンの大英図書館に赴き、サードプログラムで放送されたラジオドラマの台本をチェックした。特に、二本のみならずイギリスにおいても入手困難といわれるHenry ReedやGiles Cooperの台本を複写できたのは大きい。またLouis MacNeiceのラジオドラマ、およびインド独立を伝えるためにBBCによって1947年に現地に派遣された際に彼の報告したレポートをも閲覧することできた。またこれは別経費だが、11月23日から12月2日にかけて、アメリカのテキサス大学オースティン校に併設されているHarry Ransom Humanities CenterでDylan Thomasの草稿を調査した。特に、ラジオドラマの傑作と言われるUnder the Milk Woodの草稿を分析し、テクスト生成を跡づけることができたのは収穫であった。
〔発表〕 7月8日に東京大学駒場キャンパスで行われたベケット研究会第39回定例会で、"Voices from the Margin: Samuel Beckett's and Dylan Thomas's Radio Dramas for the BBC Third Programme"と題した発表を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

入手困難といわれた資料を入手できたのは大きい。二度の海外調査において、予想外の資料を閲覧、複写、転写することができた。それにより、BBB Third Programmeのラジオドラマがイギリスの「周縁」を描くことが多いという自説を改めて確認することができた。またそれ以外にもラジオドラマ制作とともに発展した様々な放送テクノロジーが動物の鳴き声や方言などの再現によって発展してきたことを裏付ける事実が発見できたのは、予想外の成果であった。Third Programmeにおいて、「周縁」表象が重要な要素であっただけでなく、「階級」もまた頻繁に言及される問題であったことが確認でき、研究に厚みができた。新たなEnglishnessを打ち出すイングランドの戦後において、Third Programmeのラジオドラマが果たした影響の大きさを改めて知ることができた。また本年度は研究初年度で研究の基礎を固める時期ではあったが、研究会で発表できたことも大きな成果であった。漠然としていた考えをまとめることができただけでなく、発表に続く質疑応答で様々なフィードバックをもらい、その後の研究の方向性を定めることができた。この発表と議論の経験が、9月と11-12月の二回の海外調査において、調査すべき資料をより特定することができた。またそれに伴い、研究全体のアウトラインを修正し、また詳細にすることができた。

今後の研究の推進方策

平成24年度の海外調査による資料収集で必要なラジオドラマのスクリプトは入手できた。今後はその分析とともに、それを取り巻く様々な文化事象を精査、整理する。それによりより大きな枠組でラジオドラマを分析する。
平成25年度は、まずThe ListenerなどのBBCの広報誌を調査し、BBC全体でどのような番組が放送されていたかを調べあげる。ニュース報道をメインとするHome Serviceと軽音楽の放送を旨とするLight Programmeにたいして、文化発信基地としてのThird Programmeの役割機能を確認しながら、それがどのような番組作りに結実していったか考えてみたい。特に文化の大衆化にどのようなスタンスで貢献したかを明らかにする。また戦後にその基礎が出来上がったカルチュラル・スタディーズがターゲットにした大衆像と対象比較し、Third Programmeの思い描いた大衆像を特定する。その上で、ラジオドラマがどのような登場人物(階級/地域/人種/ジェンダー)を描出したのか、より具体的なイメージを描いて行きたい。
平成26年度はこれらの研究を発展させるとともに、イングランド戦後の文化政策の様相を分析し、Third Programmeのラジオドラマを考える新しい枠組みにしたい。

次年度の研究費の使用計画

デラウエア大学にあるThird Programmeのスクリプト・アーカイブにいき、資料調査を行う。また必要な資料(CD、図書、iTunes)を引き続き調査し、購入できるものは購入する。膨大になりつつある資料を整理して保管するためのパソコンを購入する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2013 2012

すべて 学会発表 (1件) 図書 (2件)

  • [学会発表] Voices from the Margin: Samuel Beckett's and Dylan Thomas's Radio Dramas for the BBC Third Programme2012

    • 著者名/発表者名
      Takeshi Kawashima
    • 学会等名
      日本サミュエル・ベケット研究会
    • 発表場所
      東京大学駒場キャンパス
    • 年月日
      20120707-20120709
  • [図書] 『ベケットを見る8つの方法――批評のボーダレス』2013

    • 著者名/発表者名
      岡室美奈子・川島健
    • 総ページ数
      385頁
    • 出版者
      水声社
  • [図書] 『ベケットのアイルランド』2013

    • 著者名/発表者名
      川島健
    • 総ページ数
      400頁
    • 出版者
      彩流社

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公開日: 2014-07-24  

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