研究課題/領域番号 |
24520290
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
川島 健 同志社大学, 文学部, 准教授 (60409729)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 国際情報交換 / 海外発表 / 演劇 / ラジオ / イギリス / BBC / 大衆文化 |
研究実績の概要 |
本研究は1950年代から60年代にかけてのイギリスの社会状況を背景に、BBC (The British Broadcasting Corporation)サードプログラムで制作放送されたラジオドラマを再評価することを目的にする。特にDylan Thomas、Samuel Beckett、Harold Pinterらの作品を題材にする。まずはロンドンを中心とする、文化・芸術の中央集権政策が生み出した「都市」と「周縁」という二項対立が、サードプログラムのラジオドラマによって覆されていることを証明する。1950年代には、サードプログラムのクラシック音楽を中心にしたハイカルチャー路線にたいして、大衆文化を掘り起こそうとする試みがBBC全体(特にホームサービス)でなされた。2014年度はこの事実に着目し、おもに、Folk Music RevivalやCultural Studiesに代表される大衆路線とラジオドラマの関係を調査した。 成果として、まずはイギリスのウォーリック大学で行われたInternational Federation for Theatre Researchにて、"Floating England: Voices in the Air in the BBC Third Programme"という題目で発表(2014年7月30日)をした。これはDonald Cottonが企画し、複数のラジオフューチャー(実験的で短いラジオドラマ)を集めたものである。そこにちりばめられた皮肉などを分析し、それがかつての植民地主義から"Shrinking Island"へと変貌してしまったイギリスの現状を揶揄していることを明らかにした。またその形式が19世紀ロンドンで流行したMusic Hallを思い起こさせるとともに、1969年に始まるMonty Pythonのテレビシリーズを予告していることを指摘した。 また2013年度に重点的に研究したDylan Thomasのラジオドラマに関しては、第二次世界大戦期の戦争表象と関連付け、2015年度夏に発行予定の学術誌に掲載予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
毎年ノルマとしている海外での研究発表を2014年度も無事終えることができた。調査を進めていくにつれ新たな発見があり、それに伴い軌道修正をすることで当初の計画からはわずかに逸れたところで調査する点も増えてはきているが、研究はおおむね順調といえる。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度は本研究の最終年度である。これまでの成果をまとめるとともに、近い将来単著として出版できるように準備を整えておきたい。 また研究を進めていくにつれ、当初設定した視点の限界と新たな問題点があきらかになってきた。たとえば文学者とBBCの関係であれば、サードプログラム以外でも多くの芸術関連の番組が制作されている。またラジオドラマだけでなく、ポエトリーリーディングやインタビューなどの番組にも参加している作家が多くいる。そこで今後は、マスメディアにおける文学者の活動を包括的に分析できるような研究の準備をしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2014年度は資料を整理するための文房具等を購入する予定であったが、前年度(2013年度)の購入したものがまだ使用可能であったので、それで賄った。そのために少額であるが、交付決定額と実支出額にずれが生じてしまったため。
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次年度使用額の使用計画 |
2015年度は最終年度のため、資料整理のための備品がもろもろ必要になる。そのための予算に充当したい。
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