研究概要 |
本研究は18世紀から19世紀にかけての後期近代英語と呼ばれる時代の英語の語彙のうち、特に、理性、感情、道徳に関する概念を表す抽象語をとりあげ、その意味と用法を当時の社会状況に照らして明らかにするものである。 Jane Austenの小説にみられる理性、感情、道徳に関する語彙のそれぞれの場面のテクストにおける意味とその語彙を使用することの意義について、考察を行った。 例えば、mindは人間の意識・思考・感情など、人が判断をする際働かせる総合的な活動の場として捉えることができる語であるが、Jane Austen 特有の用い方や定冠詞・不定冠詞の有無についても興味深い点が指摘される。mindが表すのは人の内面的性質(innate qualities)のもので、eleganceやaccomplishmentsがマナーや知性に関わって演出され得るものである一方で、moralsに関わる人格の重要な基盤を示すものとされる。このようなmindという語がどういったコロケーションで用いられているかに注目してみたところ、_Emma_の中でも、the beauty of mind, the beauty of a mind, all the elegancies of mind, delicacy of mind, liberty of mind などといったコロケーションで用いられている。mindを核として用いられる抽象概念を表す語彙について、そのコロケーションや、当時の英語史的、また、社会的時代背景をふまえて考察した。 また、Jane Austenの作品の注釈をつける研究会に参加することで、テキストの精緻な読みを他の研究者と確認し、より文学的な観点からの解釈を深め、語彙理解についても協議する機会をえられたことは意義深いものであった。
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