本研究は、1940年代初頭のいくつかの文学作品をとおして当時のアメリカ南部の文化的自画像を探る試みである。主として取りあげたのは、W.A.パーシーの自伝『護岸の灯火』、フォークナーの小説『村』、ロバート・ペン・ウォレンの伝記『ジョン・ブラウン伝』である。『護岸の灯火』では、作者パーシーの南部思想史の位置づけを再考した。『村』ではラトリフの語り口と当時の文化的言説を検討した。ただしこれはまだ未定稿であり、公刊には至っていない。『ジョン・ブラウン伝』に関しては、神話化されたブラウン像のウォレンによる脱神話化を分析し、またそこから見えてくるウォレンの思想と南部の文化的的自画像を考察した。
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