本研究は、過去の研究で明らかにしてきたアメリカ先住民文学やチカーノ(ナ)文学の「境域 (borderlands)」に見られる場所、言語文化、人間をめぐる視点を移民やディアスポラを含むアメリカのマイノリティ文学全般の理解に援用することによって、マイノリティの文学を、アメリカの社会や国家との関係の中で理解しようとする従来の多文化主義的視点ではなく、トランスナショナルで地球規模の視野の中で再定義していこうとする研究である。最終年度となる本年度は当初の計画通り、9月にカレン・テイ・ヤマシタやトリン・T・ミンハなどの言説における「境域」の意識を探るべく、米国で補足の調査を行った。その研究成果の一部を、11月の九州英文学会において発表した。また、「境域」の概念や「境域文学(border literature)」や境域的人物像(border character) の視点が沖縄の状況や文学にも援用可能であることに着目した論文を執筆し、2016年6月に出版予定のアメリカ学会英文ジャーナルに投稿したところ、掲載されることとなった。
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