本研究では、従来のポストモダン及び多文化主義的な文学観を素地として形成されてきた「エスニック文学」及び「マイノリティ文学」が、一方では国民文学としてのアメリカ文学観を脱構築しながら、もう一方では、それらの新たな枠組みによって、アメリカ文学を固定観念化してきたのではないかという問題提起をし、そうした「エスニック文学」や「マイノリティ文学」の固定観念化に抗する「境域」の意義について考察した。アメリカ文学研究および比較文学的考察を通し、「境域」は、複数の文化、国家、言語、セクシュアリティの間に立脚点を意識しながら物語を構築する上で不可欠な批評概念であることを明確にした。
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