本研究は、ジャック・デリダやジャン=リュック・ナンシーらの大陸の思想を援用し、コンラッドの後期作品において時折出現する「奇妙な友愛」が従来の共同体を超えた新たな共同体の在り方を暗示していると論じることによって、苦悩する個人の心理を描く作家としての従来のコンラッドのイメージを幾分か掘り崩すことができた。この共同体を超えた共同体の特異性を、ポーランド=リトアニア共和国である「ルブリン連合」とも結び付けて考察する予定であったが、十分深く掘り下げることができなかった。しかし、「ルブリン連合」については、今後も継続して調査し、コンラッドの過小評価された作品の考察に活かしていく予定である。
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