研究課題/領域番号 |
24520307
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研究機関 | 国際基督教大学 |
研究代表者 |
生駒 夏美 国際基督教大学, 教養学部, 上級准教授 (60365525)
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研究期間 (年度) |
2013-02-01 – 2018-03-31
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キーワード | 文学 / ジェンダー / パフォーマティビティ / 戯曲 / 演技 / アンジェラ・カーター |
研究実績の概要 |
平成27年度は、カーターが日本に滞在している間に交際していた人物が日本語で書いたメモワールの英語訳をほぼ完成させ、現在翻訳チェックを受けているところである。この英訳はイギリスでの出版を目指しているもので、平成28年度中に出版の目処がつくことを目指している。また、平成26年度にオックスフォード大学で開催された学会で口頭発表した論文を、学術誌Angelakiに投稿するために改訂する作業を行なった。この論文では、カーターが日本滞在中に執筆したさまざまな文章を検討し、いかにカーターがジェンダーパフォーマティビティの考え方を発展させたかを分析するものである。8月末には再びブリティッシュ・ライブラリーでアンジェラ・カーターの手書原稿の詳細な検討を行ない、その研究結果は前述した論文にも盛り込んだ。またメモワールの英語訳の巻末に掲載する計画である。論文はAngelakiの編者より審査通過の連絡があり、平成29年に掲載されることが決まった。11月には国際基督教大学で開催された国際シンポジウム「Fairy Tales: Their Legacy and Transformation: Gender, Sexuality, and Comparative Literature」にて「Wolves and Witches: Sexual Outcasts in Angela Carter's Fairy Tales」を発表し、カーターの童話作品や童話のモチーフを使用した作品における社会批判を検討した。また、短編集Black Venusの分析を始め、その翻訳に取り掛かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
カーター作品の検討については、概ね順調に進んでいる。論文は海外の著名な学術誌への投稿のため、編集作業に予想より時間がかかったが、最終的に出版の運びとなったので納得している。また、手書原稿の検討については、一週間のブリティッシュライブラリーでの作業ではなかなか終わらず、28年度も引き続き、継続して行なっていくことが必要である。一方、メモワールの和訳は、原稿はすべて完成しているものの、ネイティブチェックが予想をはるかに超えて遅れているが、それは依頼した方の体調によるものなので、致し方がないと考えている。11月の童話のシンポジウムでは多くの聴衆に対して、カーターの作品の魅力を伝えることができた。刊行を目指している学術単著の一章として、童話の検討を行っているので、今回の口頭発表はそのたたき台となる。短編集Black Venusの分析と翻訳はまだ取り掛かったところである。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、1)メモワールの完成とイギリスでの出版、2)Black Venusの翻訳を進める、3)ブリティッシュライブラリーでのアーカイブ検討を継続して行なう、4)昨年11月に口頭発表した論文に加筆修正して出版する、5)今年11月に企画しているシンポジウムでのカーター作品分析の口頭発表を書く、という主に5つのプロジェクトを進展させる。3)については、8月に一週間のイギリスへの研究旅行を行ない、その際にカーター研究が盛んなEast Anglia大学を訪問し、研究協力者のProfessor Stephen Bensonと会議をし、平成29年度に行なう予定の共同研究の計画を立てることにしている。平成29年度は最終年度となるが、在外研究機関を夏から取得予定であり、イギリスで共同研究を進める。カーターのパフォーマティビティについて、国際研究を行なう。
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