アメリカ西部の開拓期については、従来、政治的、経済的な視点から西漸運動や先住民問題などが論じられることが多かった。また、西部劇に描かれるような「男の世界」と捉えられ、女性の実情は長らく見えないままであった。 本研究では、西漸運動と人種を巡る南北対立の最前線となっていた1850年代のカンザス州に焦点を絞り、女性たちの日記・手記などから"Bleeding Kansas"と呼ばれた動乱の時代に何を考え、何を求めたかを読み取ろうと試みた。そこに見えたのは、彼女たちの困難に立ち向かう強さ、より良い世界を求める情熱、制約の中で自らの可能性を広げる忍耐であった。
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