研究課題/領域番号 |
24520311
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
松田 美作子 成城大学, 文芸学部, 准教授 (10407611)
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研究分担者 |
佐藤 光重 成城大学, 文芸学部, 准教授 (60367266)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 英米文学 / 図像 / トランスアトランティック / 比較文学 / エンブレム |
研究概要 |
研究代表者は、トランスアトランティックな図像の受容を考えるうえで、最も重要であるのは、フランシス・クォールズ(Francis Quarles)の『エンブレム集』(1635年初版)と『人生のヒエログリフィカ』(1638年初版)と考え、クォールズの全集、かつクォールズ研究の第一人者であるK.J.ヘルトゲンの論文や著書を中心に調査を進めた。その過程で、たとえば1846年にボストンで出版されたReligious Emblemsに、クォールズに関連した図像や、クォールズ以前の人文主義的エンブレム集に拠った図像を見出し、17世紀英国のピューリタンたちが親しんでいたクォールズなどのエンブレムが、アメリカに受容されていたことを確認できた。これを代表をつとめるエンブレム協会日本支部も開催に関わったスコットランドストリスクライド大学名誉教授、グラスゴー大学上級研究員マイケル・バース教授講演会「メアリー女王の刺繍」の司会、およびディスカッサントとして参加した折に論じた。 研究分担者は、クォールズの復刻本、アメリカピューリタン文学に関するエンブレム論を収集した。研究対象としてベンジャミン・フランクリンおよびヘンリー・ソローに関して主として調査を行い、『アメリカ研究』47号(2017年3月25日発行)にフランクリン論が、日本ソロー学会編の単行書『ソローとアメリカ精神』(南雲堂、2012年)にソロー論が掲載された。日本エンブレム協会の研究会(2013年1月12日開催)では口頭発表「アメリカ植民地文学におけるエンブレム表象」を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
17世紀英国は、政治上はもちろん、宗教上も大変混乱した時期である。そのため、図像の変遷を追う際も、ピューリタンであるか、国教会派であるかといった大きな区分においてさえ、大陸の宗教的、人文主義的問わず、エンブレムの受容を考えるのに慎重でなくてはならない。そうした複雑な背景ゆえに、クォールズを分析するには時間をかけたいと考えている。 アメリカにおけるエンブレムの先行研究についても、これまで刊行された博士論文を収集し、テイラー、ブラッドストリート、フランクリン、ソローについて分析を続けている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、クォールズを中心にエンブレムの分析を進めるが、クォールズは17世紀以降、20世紀初頭まで英国およびアメリカで受容されてきたと思われる。そこで、18世紀や19世紀のエンブレムブックまで調査の対象を広げる予定である。また、エンブレムブックに限らない、雑誌の挿絵や物質文化における装飾におけるエンブレム的な図像にも注目したいと考え、それらを収集、また展示を見にいきたい。 アメリカにおけるエンブレムの伝播については、ボストンやコンコードへも足を延ばし、ソローやフランクリンを中心に資料収集を進めてゆく。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究代表者は、さまざまな媒体や、物質文化における実例を効率よく収集し、整理するために、ポータブルなPCと、iパッド、などの購入を予定している。また、テーマに沿った展示がある場合、出張を考えている。 研究分担者は、フランクリン、ソローの図像に関する資料や先行研究の収集のため、資料の購入やボストン、コンコードの博物館、資料館への訪問を計画している。
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